109: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/02(土) 10:52:07.97 ID:Y+SAhLWq0
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ライブ当日、私とプロデューサーさんはかなり早い時間に出立した。
きっとだいじょうぶ、なんて希望的観測をもってはいけない。なにが起きてもかまわないと思っておくくらいがいい。
あらかじめ予測し、十分な備えをした場合はなにも起こらないことが多い。今回も特に問題は起こることなく、移動に使用したバスは十分な余裕をもって会場近くの停留所に到着した。
会場の前に、まだライブまでは相当な時間があるにも関わらず、ちらほらと人の姿が見える。
「ライブのお客さんでしょうか? 早すぎません?」とプロデューサーさんに問いかける。
まさかこの人たちまで不幸に備えてるということはないだろう。
「遠くから来ている人もいるから、ふだん会わないファン同士の交流とか、いろいろあるんだろ」
プロデューサーさんが言った。
「あと物販待ちかな」
なるほど物販、と私はうなずいた。
プロデューサーさんに続いて、関係者用の出入口から会場に入ろうとしたとき、ふと辺りが暗くなった。
曇ったかな、雨が降るのかな? と振り返り、空を見上げる。
思わず息をのんだ。
数千羽か、数万羽か、あるいはそれ以上か。
到底数えきれない、おびただしい数のカラスの群れが、太陽をさえぎり、昼間の空を黒く染めていた。
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