高垣楓「君の名は!」P「はい?」
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67: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:16:07.70 ID:NMaauvKO0
「わしはいい……若い者から回してやれ」

川島は地べたに腰掛けたまま、握り飯を配給しにきた少年隊士を、腕を振って下がらせた。
半分凍った握り飯だが、物資不足の今ではそれでも貴重すぎる補給だ。
ならば、少しでも元気な者からありつけさせてやるのが道理であろう。
以下略 AAS



68: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:17:57.92 ID:NMaauvKO0

「くそッ……くそうっ……ちきしょうめっ……!!」

煮えくり返る腸の忌々しさを抑えきれずに、川島は傷ついた自らの太腿を殴りつけた。

以下略 AAS



69: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:19:00.99 ID:NMaauvKO0
「ぐうっ……!!」

殴ったところで、痛みは自分の身に返ってきた。それが、川島をたまらないほどやるせなくさせた。

文久の頃から数えて五年、新選組は本当によく戦ってきた。
以下略 AAS



70: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:19:54.41 ID:NMaauvKO0
「怪我人は怪我人らしゅうなされよ、川島さん」

場違いにひょうきんな声が聞こえたので顔を上げたら、包帯ごしの傷口に、口に含んだ焼酎をブッと吹き掛けられた。

「ぐおっ!?……っつ〜……!!?」
以下略 AAS



71: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:20:56.35 ID:NMaauvKO0
悲鳴を噛み[ピーーー]→悲鳴をかみころす

です。なぜか規制が……


72: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:21:55.27 ID:NMaauvKO0
『――――ッ!!』

白坂口の戦いで官軍の奇襲を受けた時、こいつは砲弾を顔面に食らった。
赤い肉片を噴いて五間も六間も吹っ飛ばされるこいつの身体が目の端に映った時、さすがに胆が冷えた。
周囲の兵士で、思わず動きを止めてしまう者も何人かあった。歴戦たるこいつの存在は、すでに一介の兵卒にはとどまらぬものがあったからだ。
以下略 AAS



73: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:23:14.09 ID:NMaauvKO0


「――――向井、腹は減っとらんか? 傷は悪くはないか」

顔半分吹っ飛ばされた重傷で、やつは腰を屈めて新米隊士の世話を焼いている。
以下略 AAS



74: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:24:02.14 ID:NMaauvKO0
「逃げろ、貴様」

もう、我慢がならなかった。
川島がこいつのへらへら顔を見るとき、時折、無性に苛立ちを覚えたのは、他人の事ばかりおもんばかるこいつの優しさが、たまらなくむず痒かったからだ。

以下略 AAS



75: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:24:54.20 ID:NMaauvKO0
「川島さん。あんた結構、すぐ泣くなア。侍が軽々しく、涙など流してはなんねぇ」

憎まれ口も、すぼんでしもうたな。こいつの強い理由が、はっきりとわかったから。
退くな、と響いたやつの叫びを思い出す。
きっと人生ってやつも、そうなのかもしれない。決して退いちゃいけないところを、命を懸けるべき“死に場所”ってものを、しかと弁えたるのが男ってものだ。
以下略 AAS



76: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:26:02.39 ID:NMaauvKO0

「――――――降れと申すか? 貴様」
「さに申してはおりませぬ。しかし会津に千万両のご恩を賜りし我ら、会津と運命を共にせぬものが一人もおらぬのは、忍びませぬ」

差し向かいの男は、大あぐらをかいて左手の杯を舐めている。
以下略 AAS



77: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:27:33.80 ID:NMaauvKO0
「……いつもの、検討外れの気遣いか。たわけめ。死に場所を奪われたる者達が、恨みこそすれ、感謝などしようものかよ」
「既に百の命を奪い、千の怨みを買うたる我が身。今さら、生者の恨みなどなんとしましょう」

味方すら恐れさせるこの男とまともに正面から話すのは、幹部を除けば生々しく血ぐされた包帯で顔の右半分を覆った、この若者くらいのものであった。

以下略 AAS



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