高垣楓「君の名は!」P「はい?」
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77: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:27:33.80 ID:NMaauvKO0
「……いつもの、検討外れの気遣いか。たわけめ。死に場所を奪われたる者達が、恨みこそすれ、感謝などしようものかよ」
「既に百の命を奪い、千の怨みを買うたる我が身。今さら、生者の恨みなどなんとしましょう」

味方すら恐れさせるこの男とまともに正面から話すのは、幹部を除けば生々しく血ぐされた包帯で顔の右半分を覆った、この若者くらいのものであった。

遡ること五年、手の内すらまともに知らぬ百姓小僧であったこの若者が剣を学んだは、この男である。

それは手ほどき、という生ぬるいものではなく、まさにしごかれたというが適切な、苛烈な稽古ぶりであった。
男は相手が初心であろうがお構いなしに、ずばずばと打ち込んで毎度の如く血だるまにした。その立ち合いの中からなんとか男の太刀捌きを盗み取り、寝込んではまだ傷が癒えぬうちに稽古を申し込んで血だるまにされ、の繰り返しであった。
そもそも男の方には、モノを教えるなどというつもりは無かったのやもしれぬ。事実、隊内随一の達人でありながら、この男に剣を習ったというは、この若者を除いて一人も居らなかった。

「もとより、感謝が欲しいわけではござらん。新撰組は戦う集団。戦うために在る者達。戦えぬものを連れて往くわけには参らぬ。戦えぬのに戦わせろと駄々をこねるは、わがままというものにござりましょう」

それでもいつの間にか若者はこの男の剣を受け継ぎ、隊内屈指の歴戦の猛者として今日まで生き残ったのだから、端から奇妙には見えても、師弟としての間柄が二人には合ったのだろう。

「その手前勝手ぶりは、いつ聞いても腹立たしいが。そのはしにもかからぬ下らぬ話、わしに聞かせてなんとする」
「隊を割るには、指揮官が必要です。副長が北へ往かれるのであらば、それに相応しきはお一人をおいて、他におりません」

瞬間、左手に持った杯を投げつけた。怒りのまま杯は男の右顔面を覆う包帯にぶち当たり、派手に砕け散った。



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