70: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:19:54.41 ID:NMaauvKO0
「怪我人は怪我人らしゅうなされよ、川島さん」
場違いにひょうきんな声が聞こえたので顔を上げたら、包帯ごしの傷口に、口に含んだ焼酎をブッと吹き掛けられた。
「ぐおっ!?……っつ〜……!!?」
「消毒もせずほったらかしにおいたら、蛆が涌いていずれ腐りますぞ。新撰組の鬼伍長殿が片足落とすわけにはいきますまい。」
悲鳴を噛み[ピーーー]川島をよそに、焼酎で血糊を浮かせ、傷口と癒着しかかっていた包帯を手際よくはずして、手拭いを裂いた即席の包帯を巻き直していく。
べりべり、と包帯がはがれると、カサブタの下から新たな血が滲みだした。
「っつ……新撰組など、もはや名前だけしか無かろうが」
「そうかもしんねぇ。けんど、そりゃあ、あんたが死ぬ理由にはなんねぇよ」
最盛期二百人を超えた新撰組も、いまや五十人を切っていた。
かつて京を駆け抜けた仲間たちは、もう、この戦場にはいない。
百姓なまりまるだしの男は、懐から薬包をひとつとりだし、川島に渡す。
「石田散薬です。あいにく熱燗はござりませぬが、ご容赦下され」
二カッと笑って差し出してくるさまに何か無性にむしゃくしゃして、ひったくるように受け取り、焼酎で流し込んだ。
石田散薬と言えば土方の生家の品で、熱燗で飲めば打ち身や骨折、切り傷にも効くという重宝な常備薬であり、新撰組でこれの世話にならぬ隊士は居なかったほどだ。
喉から腹がかッと熱くなると、なるほど五臓六腑に効いていく気がするものである。
「気付けに、消毒、石田散薬。焼酎は万能です、実にしょっちゅう、使い申す」
「……」
「……焼酎はしょっちゅう」
「それはもういい」
強張った肩の力が抜け、血の巡りと共にむしろ痛みも増した気がする。
こいつは、なぜこんな能天気で居られるんだ。
顔の半分、砲弾に吹っ飛ばされているというのに。
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