高垣楓「君の名は!」P「はい?」
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68: ◆PL.V193blo[sage]
2018/04/20(金) 21:17:57.92 ID:NMaauvKO0

「くそッ……くそうっ……ちきしょうめっ……!!」

煮えくり返る腸の忌々しさを抑えきれずに、川島は傷ついた自らの太腿を殴りつけた。

御大将が真っ先に帰順しちまったのだから、もはや幕府もへったくれもない。故に“旧”幕軍なのだが、会津の殿様は、引いては新選組は、武士道に外れたことはひとつもないはず。
右脚の甲と太腿に銃弾を受けて、さしもの剛剣・川島も、満足に立てやせぬ。へたくそな包帯は、殆ど経験の無い新米隊士が巻いたものだ。
ほんの数か月前に入隊したばかりの、簡単な応急処置のやり方も知らぬ十三、十四の少年隊士までが、補給も武装も医療道具もろくにない、こんな泥沼の戦争に放り込まれる事になってしまった。

とってもやり切れねえ、お国の為と信じて命懸けで働いて、挙句がこのざまかよ。

薩長が錦旗を掲げて新政府、というのは、そりゃ時勢だろう。後世は新撰組を時代の流れにいたずらに逆らった愚か者のように語るかも知れないが、現実が見えぬほどの馬鹿ではない。

時勢は百も承知であった。それでも、侍として国家の治安のために戦い、徳川の禄を食んだからそれを支えるために戦い、会津藩お預かりとして新撰組の名を賜ったからそれに報いるために戦った。それは合理以前に、違えてはならぬ物事の筋というものであろう。
それを、旗色が悪いからと悪いからって、はいさいと節を曲げて、聞き分けよく敵に寝返るなどというのは、それこそ士道不覚悟ではないか。

ところが蓋を開けると、その武士の棟梁が真っ先に逃げ出した。あまつさえ、必死の覚悟で戦った会津中将殿が、死ぬ気で働いてきた俺たち新選組が、天下に仇なす反逆者で賊軍だと。

そんなバカな話があるか。こうまで上の人間の思惑にいいようにされなきゃならねえのか。命がけでやってきたってのに、しょせん俺たち下々はお偉いさんの都合通りにされる虫けらか。


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