48: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:14:38.33 ID:X17K8DuQ0
心臓の音が早って煩くなる。それを認めるには勇気がいるような気がする。
あの日をこんなにも後悔するワケが、心の見えなかった部分にある。
49: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:15:49.94 ID:X17K8DuQ0
◇
50: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:17:03.98 ID:X17K8DuQ0
だから、扉がそっと開いた音はやけにはっきりと聞こえた。
この部屋に用事がある人はたったひとりだけだ。
51: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:18:22.60 ID:X17K8DuQ0
「あのあとね、お母さんやお父さんにも大反対されちゃって、ケンカしちゃって」
「やっぱりアタシの夢は誰にも応援してもらえなかった」
52: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:18:56.21 ID:X17K8DuQ0
分かち合えない心は、互いに伝えるべき言葉を渡せないまま、すれ違い始めた。
もうなりふり構っていられなくなって、自分のエゴが咄嗟に悲鳴をあげる。
53: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:19:46.13 ID:X17K8DuQ0
「……アタシは、絶対にアイドルになりたいの」
もう一度、想いを確かめるかのように忍は呟く。
54: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:21:03.31 ID:X17K8DuQ0
僕の身体はもう動かなかった。思考もほとんど止まっていた。
忍の身体がもう一度僕の横をすり抜けていこうとする。
55: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:22:21.21 ID:X17K8DuQ0
音楽室を何一つ見逃さないようにゆっくりと見渡す。
忍が作った広いスペースの跡、アコースティックギター、マイク、アンプ、ノートパソコン。
そこにはいつも通りの光景があった。
56: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:23:40.29 ID:X17K8DuQ0
3、2、1。
ボディでリズムを取って、震える指で最初の弦を揺らした。
シンプルなギターのリフを丁寧に弾いていく。
57: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:24:22.24 ID:X17K8DuQ0
残響が消えて、僕はできることをやったという実感があった。
ただ、これを確かな言葉と一緒に渡さないと何も始まらない。
58: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:24:50.24 ID:X17K8DuQ0
転ばないように、でも、できるだけ速く。
ここから一番近い駅へと息を切らして走る。
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