56: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:23:40.29 ID:X17K8DuQ0
3、2、1。
ボディでリズムを取って、震える指で最初の弦を揺らした。
シンプルなギターのリフを丁寧に弾いていく。
ずっと演奏してばかりで歌うことはあんまりしてこなかった。
だから声が上手く出ない。キーをちゃんと保ってられない。
忍のことを笑っている場合ではなかったなぁと心の中で思う。
それでもサビに向かって、一番伝えたいことに向かって小節は進む。
少しづつ歯車が合っていく。ギターの響きも拙い歌声も僕の心にチューニングされていく。
すっと大きく息を吸う。今できるありったけを大切なフレーズに込めて。
『キミの夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ』
『風の強い日を選んで 走ってきた』
どんなに寒い日も、風の強い日も、忍が必死に練習してきたのを見てきたんだよ。
これから先、僕の知らないたくさんの人と出会うんだろう。
忍の無鉄砲な挑戦が上手くいくのか、いかないのか分からないけれど。
成功も失敗も素直に願ってあげられないけれど。
それでも、僕はこれからもずっと信じていく。
君の夢が叶うのは、君のおかげでありますように。
自分の声を掻き毟って、六弦を震わせて。
僕の声が、唄が終わってしまう前に。
想いよ、響け。思いよ、届け。
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