22:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:23:58.68 ID:3iKMEwHU0
「……でもなぁ。やっぱり、何も相談してくれへんかったのは、納得できへん……
いや、したくなかったんやろうな、私は」
奈緒さんはぱたりと顔を天板にのせる。くせなのかもしれない。
あの頃にはなかったくせだって、そりゃあいくつも出来るだろう。
23:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:24:26.68 ID:3iKMEwHU0
「がんばれ」
そんな言葉が、ぽつりと呟かれた。
顔を上げる。私に向かって言われたわけではなかった。
奈緒さんは体を起こし、画面へ視線を向けていた。
24:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:25:05.27 ID:3iKMEwHU0
奈緒さんは天板にぴたりと耳を当て、まるでコタツの呼吸を聞いているみたいだった。
しばらくして、んんっ、と唸りながら起き上がる。
「お、おぉー。あれな、覚えとるよ」
「本当に覚えていますか?」
25:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:25:31.71 ID:3iKMEwHU0
「そうです。ちょうど寒い時期だったので、コタツに鏡を設置して、お化粧したりしてましたね」
「おー、あれ凄かったよな。四面に鏡が重なりあって、
真ん中に置いてあるミカンとれへんくなってなぁ。あ、ミカン食べる?」
「いりません。っていうか、お酒飲みながら甘いものは食べないでしょう」
「えー、私は食べられるけどなぁ」
26:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:26:21.90 ID:3iKMEwHU0
「運ぶの手伝ったんだから、許してくださいよ」
「あほか。だいたい、志保がおらんでも誰か手伝ってくれたわ。私、人徳に溢れてるし」
「まぁ、否定はできませんけど」
「そこは突っ込んでほしい」
27:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:26:56.87 ID:3iKMEwHU0
「可奈がコタツ布団、簀巻きにして背負っとったなぁ」
「垂直の布団が歩いてましたからね。完全にコメディ映画でした」
「静香と志保の息があわんと、電信柱に天板ぶつけそうになったり」
「そんなこともありましたね」
「ぶつけそうになると、エミリーが『oh my god!』って叫んどったからな」
28:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:27:26.41 ID:3iKMEwHU0
「きみな……もっと言う事あるやろ……」
「拭いてください」
「もちろん拭くよ。
……くそっ、あんなギャグで……いやでもアミーゴいう奴やしな……」
29:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:28:09.65 ID:3iKMEwHU0
「後悔はしてないんです。
765プロにいたときのことは本当に夢みたいで、同時に、誇りでもあります。
素晴らしい仲間と過ごせた時間を、キャリアを、汚さないようにやってきたつもりです」
私はそうやって、この7年間を過ごしてきたのだと思う。
30:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:28:39.64 ID:3iKMEwHU0
「例えば学校での青春やったり、恋人との甘い一時やったり、気のあう仲間との時間やったり。ぬくぬくーっとしたあれ、コタツみたいやんか」
思い返す。なるほど、奈緒さんの言い方はおもしろい。
あの日々はコタツのようだった。一理ある。
31:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:29:18.16 ID:3iKMEwHU0
「楽しそうやんけ」
「……ライアールージュなんで、澄ましてますけど」
「あげあしをとらないっ!」
歌がきこえる。私の歌だ。
32:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:29:58.27 ID:3iKMEwHU0
――どれくらい、経っただろうか。
いつの間にかライブの再生は終わっていて、部屋の中はしんと静かになっている。
奈緒さんにメールをみてもらおうか、いや気恥ずかしいしやめとこうか、でも本来であれば奈緒さんにも送るものだしな、なんて考えて顔をあげた。
そして、思わず笑い出してしまう。
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