7: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:48:38.02 ID:6rZ5mY140
突如顔に火を灯した樟葉は、許してねって控えめに手を合わせて祈りのポーズしたあと、手を振って違うから私じゃなくて偶然が悪かったんだよーと焦りのガードを張る。
そんなことさせるか!ホルホルしてやる!
勇太「クラスと順調なんて良いな。土日も勉強がしたいとかお兄ちゃん感激するぞ。そんなに学校が好きなら布団を学校に持っていけばいいと思うぞ!」
心に槍がささったのか、そこまで言うことないでしょ!と、むっ!と樟葉は幼稚園児のようにほっぺを膨らまして、私怒ってるんだからね!と示す。
樟葉「ふんっお兄ちゃん知らない!」
8: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:49:13.31 ID:6rZ5mY140
ところで、時間。あ、そうだデートコースどうしよう。エスコートする時間も場所も、あのときに最終決断してればよかった。全くない。
勇太「六花。話したいことがあるんだけど。今日のデートはどこがいい?」
六花「う〜ん。いろいろあるけど〜」
勇太「動物園?遊園地?植物園?豪華客船?ビル?都市部?それともほかのところ?ナガシマスパーランドでもいいぞ?」
昨日の晩羅列した項目を滝を流すように話すが、六花はそんなことは聞いていない。
9: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:50:06.71 ID:6rZ5mY140
華麗に流れる透明な川の中を泳ぐ、レアキャラ率5%を誇る、翼を閉じて川に流されるカモを六花は見ながら目の輝きようが半端なく興奮し、カモ可愛い、こっち見て、飼っていい?と言ってくる。正確には“異方の地から訪問せし悪魔の一派”ふんっ!などと意味の分からんし喋ったらドヤ顔すな!と言わんばかりの知識自慢をしてきた。無論ダメなの分かっててこのセリフ言ってほしいんだろ。はいはいかっこいいなというと、六花はじゃあダイブするね!と言ってきたで、慌てて腕をつかんで強気にチョップを加えた。痛いっ!って言う悲鳴が面白い。
そういえば不思議に思ってたんだけど、こいつ俺と本気で、しかも本番デートで公園に行くなんて普通じゃあり得ないよな。六花といえども重い空気の理解をした反応はさすがにする。デート周期の空き具合から察せられるかとビクビク思ってたのに。今も理解していないかよこいつは。はぁ呆れたやつ。いやちょっと待て。別の方角からも考えられるよな。それも最悪な方に。もしかして俺の事、実は嫌ってるんじゃないか……。俺と金のかからない場所に行ってスピード遊びで業務的に楽しんで早々帰りたいみたいに思ってたりして。俺のトークがつまらなくてけど言えなくて……。うわあ。そう思うと横を歩く六花の姿に寒気を感じてきた。俺の足が六花の体温から遠ざかる。いやだめだ隠し事はなしだ。思えば本当になるんだ。絶対思うな!さすがに考えすぎだよ俺。でも半分、本当だと思いたくない。ええいっ。意を決して六花の肩を突き真実を問う。
勇太「最近学校楽しい?」
「うん!」と帰ってくるんだろうなぁ。
すると六花はなぜか下を向いて何も答えなかった。しばらくじっと立ち止まって。さっきの元気も急に喪失した。図星か!?六花かあ!?なんだよ!いじめられたのか!!?と強く怒鳴る。いじめは怖いけど、命より大事な彼女のためだ!絶対に倒す血みどろにして前歯2,3本、口を開けられないようにしてやる!と戦意に駆られて意気込んでいると首を横に振られた。違うのか……。「心配しないで」って言われても無理だよ。ああもうどうしよう!ところが急に六花は笑顔になり呪文を唱えて、はああ!封印!と言って俺の顔に手から光線を放ってきた!え、ええ!!?なんだこの変わり具合は?!そのあと大丈夫だ、と肩を叩かれる。あの、俺が心配しているんだが。
10: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:50:38.53 ID:6rZ5mY140
面白い奴だ呆れるぜ。
ヒートアップが燃え尽きたため少し無言の間が続く。
疲れてぼーっと歩くと、六花は遠くのぼやけたビルを見て何か思いついたようだ。
六花「あのね、ベル博士からもらった電力綱手で屋上の柱に綱手を飛ばして引っかかったのが分かり次第よじ登るの。夜の消灯を確認し、秘密で内部に侵入、そのあと爆弾を仕掛けてドカーンってやりたい!」
勇太「ベル博士って誰だよ!」
11: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:51:22.46 ID:6rZ5mY140
六花「ふっふっふここで怖気づくとは卑怯なものだな少年よ」
勇太「その手には乗らん!」
六花「そうか。じゃあ特別にゆうた君に条件をあげよう。もし君が私の究極奥義“真剣白刃取り”に、ぷっ無様な姿だが突・き・通・せ・ば、君が願いうるすべての条件をかなえて差し上げよう」
勇太「むっかあああ!バカにしやがって!どうせお前負けるだろ!」
六花「怖いんだな?」
12: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:51:59.46 ID:6rZ5mY140
勇太「ふっふっふ!待たせたな!邪王心眼よ!我がダークフレイムマスターが文字通り遊んでやろう!!」
六花「なぬ!?」
勇太「行くぞ!!!」
そう思うと世界は変化し、荒野の果てになる。空は曇り、草もなく、ビルの残骸と砂ぼこりが顕著だ。六花が月から飛んで剣をおろしてくる。俺は壊れたビルの屋上から雷を落とす。
六花「うわあああああ!!!!」
13: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:52:28.71 ID:6rZ5mY140
呼吸がそろそろ持たない。決着をつけよう。
六花「どうした……。もう終わりか?」
勇太「あまり戦ったら後半戦持たなくなるぞデート。いやガチで。だからふふふっ。」
勇太「邪王心眼よ。貴様は強い。世界で最強なことを認めよう。だが所詮この俺様には勝てってこないのだ」
六花「なぜだ!」
14: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:52:57.35 ID:6rZ5mY140
勇太?と下げた俺の顔の下から覗かれ慌ててにこやかな笑顔をつくった。どうやら偽の世界から連れ戻されたようだ。癖になるからやめようそれも今日に限って。うん、と決意し、あんなこんなやり取りで笑いあった後やっとの思いで公園についた。
かけっこにやや相応しい新緑に尽きる、思ったより広い公園だが期待を裏切られる。ずいぶん殺風景で日曜日なのに誰も園児すら一人もいやしないので、このあたりに行事かあるいは幽霊に食べられたのかってぐらい人工音の一滴も聞こえず、ちっぽけな俺たち二人でこの砂地にあふれた大世界をしばらく支配することに恐怖心を感じた。
情けなく俺の背が震えるのと対照に、世界の裏側の仕組みを知らない無知なる勇敢者は猛ダッシュのローラーシューズでぶっ飛ばし世界を冒険する。
六花「ゆうた!はやくはやく!」
勇太「おーい待ってくれ!」
15: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:53:27.34 ID:6rZ5mY140
さて二人の過熱も消滅したことだし、すべり台から六花と俺を下にした二段ロケット構えで膨大な風を浴び落ちる。六花の叫び声がかわいくて忘れられない。
六花「次は、次はねー、ブランコ!」
どうやらこの公園を支配する小さな国の王女様は一睡も休ませる気はないようだ。
ブランコまで駆け寄った後「ゆうたー!」と呼ぶ声が聞こえる。もっとほしいもっとくれというエロおやじ心丸出しで、今の自分は今の自分でも見てはいけないと思うほど人情の愛に溺れていた。
4人用のブランコに六花が好きなのを選択し、仕組みを理解してる最中なのか立ち止まった後ブランコに座った。なんだ、隣に座っていいのか?それとも背中押してほしいのか!?とその様子を垣間見て、向いた愛くるしい顔つきの方向によると背中を押してほしいようだ。
16: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:54:08.46 ID:6rZ5mY140
勇太「休みましょう!お願いだから休ませてください!」
と嘆願すると、六花は俺に一回振り向くと無言になり前を見て「ドームがあるー!!」って言った。
いやだああああああああああああああああああああああ!!!!
俺は痛んだ腕をぷらんぷらんさせて痛みを11月の風で冷やしつつ、3歳児並みに頭と体力の等しい六花の元に行くが、何やら身構える体制になり後ろに回る。
勇太「ドームにさっさと入れよ」
17: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:55:05.53 ID:6rZ5mY140
六花はその成功したドヤ顔を見せると、再びドームの前に向き、何事もなかったかのようにゆっくりと暗黒の中に入っていく。
愛が、憎しみが、憎悪に変わるってことはこういうことか。ああ、そうなのか。
序列を成す歩き方の六花が一歩二歩、足跡を構築していく。俺はその序列に逆らい、しかし彼女に存在を気付かれないよう静かにその影の最短まで足をのばす。
彼女は一瞬振り向く、それが殺傷の合図だった。
俺は段々侵食していく影の実在へと猛烈に駆け寄り六花の横腹に触る。彼女の抵抗より早く爪の先を肌色に並べ、憎い脂肪を内臓までえぐり音階をつくる。
95Res/303.64 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20