13: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:52:28.71 ID:6rZ5mY140
呼吸がそろそろ持たない。決着をつけよう。
六花「どうした……。もう終わりか?」
勇太「あまり戦ったら後半戦持たなくなるぞデート。いやガチで。だからふふふっ。」
勇太「邪王心眼よ。貴様は強い。世界で最強なことを認めよう。だが所詮この俺様には勝てってこないのだ」
六花「なぜだ!」
勇太「クククッ。良い質問だ。お前の攻撃はあ・さ・いのだよ。それは俺を本気で殺すことのできない証。お前はすでに遠慮している。俺なら本当ならこんな雑魚一瞬で倒すところだったが力がすごかったのでな」
六花「邪王心眼はいつでも最強!」
勇太「その邪王心眼の火力が弱まっているのさ。知らないか!知らないか!フハハハハハ!どうだ他人にずかずかとプライベートを破壊される気分は!俺と一緒に闇落ちしないか!」
六花「だれかこんな卑劣なやつと!」
勇太「よろしい、じゃあ最後の勝負だ。剣を取れ。俺もする。それで世界の行方を決めよう」
俺と六花は意気込んでお互いを構え、風の音がよく聞こえた。
勇太「いくぞ!闇の炎に抱かれて消えろ!」
六花「邪王心眼はお前を超えるんだ〜〜〜〜!!!アヴァロンスマッシャー!!!」
鈍い音が交錯し、金属音の光が周囲に拡散し、お互いがそばを横切る。
はぁ……。はぁ……。はぁ……。どうしよう、倒れたほうがいいのか。
勇太「う……」バタッ
すると六花も倒れた。
六花「う……」バタッ
お前は生きろよ俺の分まで!!
そして元の空き地に戻った。
俺と六花は疲れて地面に横たわる。空が青い。汗が飛ぶほどの風が心地いい。
疲れたけど、楽しいな。
こうやってバカやるの楽しいな。
やっぱり俺には中二病の血が受け継がれている。
六花と激しくバトルして楽しくなって、こんなに幸せでいいのかな。
鳥が飛ぶ。天高く。まるで自由を知らない旅人のように。
翼を広げる音に顔をあげると、青空の小さな雲も、暖かな光を送る太陽もゆっくりと形と場所を変えて移動する。路上を見渡せば、青空の下、犬の散歩する人やランナーやおじいさんとおばあさん夫婦だったり自転車に乗る若い女性2名が通過していく。その動きの見方も感じ方も全く異なっては小さく消えていく。向こう側にある風力発電機も回転しては休止の繰り返し。俺にこの瞬間で今しかないその姿を見せたくて現れて、そして消えたのだろうか。なんも意味のなく、ただその流れる姿を知らせたくて。人も、川も、自動車も、全部。だけど急に俺のいるこのタイミングまで恣意的にワープしたとかってのはありえない。ただのすれ違いだ。でも、始まりは必ずあり必ず生まれ育地もある。皆、皆、ここにいる人たちは、動物は、無機物は、どんな生き方をしたんだろう?例えばあのおじいさんは?どうやってここまで生きたんだろう?どうやって人生の波乱を切り抜けてきたんだろう?あの子犬はどこの飼い主のだろう?もともとどこで生まれたんだろう?母親に見守られなくて寂しいと思ったりしないのかな?自転車の2人は?どこで知り合ったんだろう?どうやって仲良く笑う仲になったんだろう?喧嘩が起きたときどう回避したんだろう?観測できたものすべてしばらくすると見えなくなる。傍から見るとのうのうと歩き走り流れる何も苦悩を残さず一本道を通るような姿だ。だけどこの世界は全員に物語があって、それも納得のいく結果が必ずあって、遂行するに値する理由を動機にその過程がたまたま俺たちと遭遇したということ。そして最後は必ず終わり極小の姿になり果てそして見えなくなる。一本の蝋燭のように煌めく存在を明るく示しては勝手にいなくなる。誰にも知らせずに消えていく。六花と俺を置き去りにして。でも、ということは今のこの場所を通りすぎるまで生きられた何らかの理由を俺たちも使えば、きっと幸せに暮らしましたとさと昔話の文面通りに一生を過ごすことができるのだろう。新しく開かれた異世界への道を感じている。光で創られた太い道を前に、俺は少年的な好奇心に強く惹かれて佇んだ。最果ての頂点にある楽園を求めて人間的になる俺は思わずその手を伸ばしたくなる。奇跡的な温かみに触れたくて。それで終わりでいいのか。いや、まてよ。そもそも俺たちはそんなのと同じ人生を望んでいるのか?その道が楽しいなら楽しいで俺は何のために今六花とデートしてるんだ?六花は仮に選んだとして喜んでくれると思うだろうか?六花に選択を委ねる自体正しい行為といえるのだろうか?でもあの者達に憧れを持ったということは関心を捨てられずにはいられなくて。世界危機の概念をかき消す代わりに提供されるまさしく誰もが求める安住の地。六花の横顔を見る俺。流れるものと、六花。本当の道を行く理由を知っているはずなのに、その大切な欠片も理解しているはずなのに、俺の足は一歩も動かない。気が付くと夢の世界の虜となりありもしない虚構の音も聞こえる。踏切横の線路に電車が走っていないのに、一方通行の線路上を蒸気機関車が理解を超えた速度で、黒煙もなく一瞬で5つの車両が通り過ぎる。はっきりとそんな妄想が見える。見てはならない物を見ている気がする。でも食い込まれてしまうんだ。望んだわけじゃないのに、何か意味があるんじゃないかってかすかな期待が胸に警鐘する。そして意図は全く分からない。分からない。分からないから青空を見て、その変わらぬ青さに虚脱感を得た。
鳥が飛ぶ。そしていなくなる。ただ意味なく世界は偶然、その場所を通り過ぎるのみだった。
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