六花「勇太をなんとしてでも独占したい!」
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14: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 22:52:57.35 ID:6rZ5mY140
勇太?と下げた俺の顔の下から覗かれ慌ててにこやかな笑顔をつくった。どうやら偽の世界から連れ戻されたようだ。癖になるからやめようそれも今日に限って。うん、と決意し、あんなこんなやり取りで笑いあった後やっとの思いで公園についた。
かけっこにやや相応しい新緑に尽きる、思ったより広い公園だが期待を裏切られる。ずいぶん殺風景で日曜日なのに誰も園児すら一人もいやしないので、このあたりに行事かあるいは幽霊に食べられたのかってぐらい人工音の一滴も聞こえず、ちっぽけな俺たち二人でこの砂地にあふれた大世界をしばらく支配することに恐怖心を感じた。
情けなく俺の背が震えるのと対照に、世界の裏側の仕組みを知らない無知なる勇敢者は猛ダッシュのローラーシューズでぶっ飛ばし世界を冒険する。
六花「ゆうた!はやくはやく!」
勇太「おーい待ってくれ!」
全く、公園に来ただけで犬の駆け回るようにローラーシューズで何回も周る六花には呆れて嬉しさで満ちる。ある意味人生を楽しむ天才だよあいつは。
六花は砂場掘ったら恐竜の骨が出るかもしれない!と興奮気味に振り向いてダッシュをした後、遊具を目の当たりにして呆然とおぉ〜と眺め、少しどれにしようかな♪どれにしようかな♪と体を小躍りさせながら暫くして少し考え、目的に向かって一直線にした。
六花「ゆうたー!すべり台!すべり台!」
勇太「俺走るのきついんだから、待って!」
ローラーシューズもあるのに俺の行き遅れを考慮しないんだからもう。息が苦しい。しかしこの年にしてぜいぜいはあはあいうってやばくない?
勇太「はぁ……。はぁ…….。」
六花「ゆうた!」
俺は両手を膝につけるのも理解しないようでやっと、やっと、ちょっとタンマ。やっとすべり台に……。ついた。
六花「ゆうた来て」
一人ですればいいじゃんとの意見も無視で呼び寄せる。
六花は、俺がそばについたのを確認して小さな歩幅で元気よく一歩一歩右足を上げ、左足を上げ、中間までくると一瞥し、ただ俺の顔をじっと見つめてくる。
登れってこと!?やれやれだぜ。
勇太「どうしてもっていうならこれっきりだからな!」
六花は倫理観がぶっ壊れてるからいいけど、俺は高校二年生にしてすべり台でまさか登るとは思ってなかったよ!卒業したの!六花が喜んでくれるならただでやってやるけどさ。
俺が片足をアルミニウム?に乗っかった音を聞くと、六花はまた一歩上がり最上階まで上り詰める。そして美しい景色に感銘を受けたようで、案の定滑る。滑る。俺なんのためにきたの!?
退屈なすべり台を登ってはやくあのベンチで休もうと思い色鮮やかな街中を眺めていると、サメのように見えない範囲から光速押し駆けジェットで、俺の背中にくっついてきた!
六花「ゆうた!あぶない!」
勇太「ぎゃあああ!お前が危ない!お前ヤバイ!すべり台から転落したらどうする!!」
六花「ちょっと待って、やりたいことあるの。これがやりたいから今日呼んだの。ゆうた、腕を水平にして」
は?は?は??意味が分からない。重要なことなのか?そうは思えんが。とりあえず従っておくか。
両腕をX軸に平行にすると「そのまま」と言われ、六花は空いた脇の下に手をまっすぐ伸ばす。
これって……?まさか!
六花「エンダーーーーーーーーーーーー!!!!!リアーーーーーーーーーーーーーーーー」
六花「エスポパー……ニャアアアアアアアン!ニャアアアアアアアン!!!ホオワアア……」
歌詞覚えてないんかーい!
なにこれ!?どこからどう見たら氷山に衝突する図が描けるんだ!!
六花「高いところに来たら一度はやりたくなるよね☆」
勇太「ならないからならないから!!せめて船の上だって!!そんなことやるの変人ぐらいだ!」
暫く脅迫的にこの形をつくられた後、そろそろやめていい?って雰囲気を出す。
腕がしぼんで終わりかと思ったその時、目がくらんで不意を突かれた。
その垂直な腕がクワガタのように絡めて収束し、俺の腹に優しく絡まる。
その柔らかい絆の手と細い腕は、後ろの頭と一緒にぎゅっと俺の腹を圧迫し、六花の生命の温かさを感じる。俺はこんなバカップルがやることを世界に晒しながら愛に焦げて顔が赤面し、周りに誰もいない運の良さに感謝する。腕の絡みつきはますます強くなる。
無垢で怠惰で嫌だと思ったすべり台は、ふとしたちょっとのきっかけで天国界の頂きに変化を遂げた。六花は無言のまま俺の愛を補給する。
俺は急ににやついた。ひょっとしたらデート史上最高に幸せかもしれない。ちょっといいかもって思った。へへっ!この気持ち誰にもあげないよ!
これが青春か。これが青春なのか?青春バンザイ!!!?(これでいいのかよ!)


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