44: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:13:54.05 ID:6rZ5mY140
そのぽっかりと空いた夜空にスライドして焦燥と不安が俺を襲う。大丈夫だよな……。
六花「空」
んっ?
六花「大きい」
勇太「うん」
45: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:14:42.61 ID:6rZ5mY140
勇太「どうした?お前、前と違うんじゃないか。迷惑〜なんて七宮以来だぞそんな考え他人から聞いたの。あれか。異端ってやつか?」
六花「ゆうたから見ればそう見えたの?」
勇太「えっ……。うん」
唐突な言葉に思考が回らなかった。上手くない方向に行ってしまったことは理解できる。六花俺のこと気遣ってたのかよ。その言葉を聞いてもう一つ思い出したことがある。夕方の「今日の私は私らしかった?」って。迷宮推理の謎の言葉。六花は六花だろ。当たり前だって感想を抱いたあれだった。まさか。俺の頭の中で変な言葉が浮かぶ「装い」?でもうまく情報とリンクしない。
勇太「ああ、な。お前はそんな奴じゃなかった気がするんだ」
46: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:15:19.81 ID:6rZ5mY140
六花?お前六花なんだよな?お前、今一番言っちゃいけないこと言っただろ。やばい、信じたくない。いやだ、いやだ、いやだ。この世界は邪王心眼に支配されているって思ってるんじゃないのかよ。設定でも本気でそう思っているだろ。毎回周囲に迷惑かけて。長年一緒に居るはずなのにこいつの思考が分からない。明らかに目の前にいるのは六花じゃなくて、六花の振りをした誰かだ。誰かなんだ。俺の六花ならそんなこと言わない!六花はそんなやつじゃない!!でもダークフレイムマスターって言葉知ってるなら過去の俺も知っているのが筋だと思うから。ああ、止めてくれ。すなわち……同一人物……。
でも待ってくれ。ひょっとしたら六花の思い違いかもしれない。
ここは質問をひねり何とか導き出せばいい。
だが頭がくらくらしていいのが思いつかない……。
勇太「お前がほんとにあるって言うから本当なんだぞ!」
47: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:15:49.75 ID:6rZ5mY140
勇太「ごめん……ごめん……」
六花「やっぱり、ないよね」
勇太「でもいつか目覚めたりするかも……しれないかもしれない」
六花「ううん。分かったから。ゆうたが無理しなくていいよ。ありがとね」
すると六花は耳の後ろにある白い輪を外し、邪王心眼を封印する眼帯を右手の掌に持ち、きゅっと握ってまた開いた。
48: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:16:28.77 ID:6rZ5mY140
おい待てよ!
話したい!……話したい!……
でも話せない……!勇気がでない……!
心の中がマグマのようにぐつぐつ湧いてくる。
今までのことは何だったんだよ。
49:名無しNIPPER[sage]
2018/01/05(金) 23:16:46.82 ID:ZmhD36edO
見辛いなんて次元じゃねえ
50: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:17:00.86 ID:6rZ5mY140
あ…………。
俺は今、言葉を喋ったと思う。それがなんだか本能では知っていると思う。その本能が一番まずいときに作用したのもそれも理解できている。この後何言われているかも分かっている。
頭を下にした草木の見える場所で。
声が震える。体が震える。目玉が小さくなりきつく搾り取られている。生きる気がしない。心臓の音が響き渡っている。呼吸は口でするしか集中が持たなかった。何もかも失った悲鳴を感じている。
やっちゃいけなかった……。止めるべきだった!!
51: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:18:08.41 ID:6rZ5mY140
勇太「空が奇麗だ。真っ暗で綺麗だ。今更だけどさ、禁断の森の先の崖って、巨大なドラゴンがいたり、前作主人公がいたり。そうであってもおかしくないよな。でもいないんだよな……」
「星が奇麗だ。あの星はギリシャ神話とか、過去に見たらしい神を映しているけど、実際はその人の妄想に過ぎない。ただの自然現象を神と崇めるなんておかしいよな。ははっ……」
「……。夜はいつまで続くんだろう。ひょっとしたら永遠かもな。誰かを生贄に捧げなきゃ朝はやってこない。そういうのもいいかもな」
「……。でも永遠じゃない。必ず朝はやってくる。永遠なんてものは存在しない。俺達はいつか死ぬ。どれだけ約束しても最後の時はやってくる。笑ったあの頃は返ってこない。皆後悔しながら歩いている。この草木だって花だって、いつか枯れて死んでしまうんだ。町を歩く人だって、道を歩くおじいさんもおばあさんも、みんな笑顔だった。二人でゆっくり歩いて、楽園の彼方まで歩くんだ。犬を連れて散歩する人も、自転車で平行に走る二人組も、いつか離別か葬式で永遠に会えなくなる。残酷だよな。楽しかったのに。走っている車も、回っている風車も、いつか壊れて粗大ごみ扱い。大企業だって買収されるとか倒産するとかで死んでいく。それなら日本もいつか壊れるんだろうな。この地球もいつか自転ができなくなる。太陽もあと50億年すれば燃え尽きて消えてしまう。この宇宙だって250億年の歳月。いつかは消えてしまうんだ。皆、どれだけ頑張っても、やがては砂に等しくなる……」
「それなのに、それなのに……!俺たち何のために生きているんだろうな。努力したら無駄じゃないかって思うんだ。愛する人の誰かのために生きたって、その人は永遠に生きられるわけじゃない。何かが、天罰的な理由で偶然殺されるんだ。悪いことしてないのに」
52: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:18:54.05 ID:6rZ5mY140
六花「かっこいいから、ずっといてほしいの……!」
「あのね、あのね、ものすごく怖かったんだよ!」
「聞いて!」
「ゆうた!怖かったよ!食べられそうな気がしたの!!」
「一週間前ね、」
53: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:19:32.71 ID:6rZ5mY140
六花の悲痛な大きな叫び声が巨大な夜空に共鳴する。
彼女の大粒の涙が俺の肩を痛く冷やす。
六花の俺の抱きしめる強さが悲しくて俺も涙をぽろぽろと落とした。
そうか……。そうだったんだな……。
六花……知ってしまったんだな……。
54: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:20:04.60 ID:6rZ5mY140
嫌だ。嫌だ。認められない。
体が拒否反応を示す。
知りたくなかった……!
認めたくない……。
守るべきものはない。俺には心から守る存在が一人もいない!
95Res/303.64 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20