53: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:19:32.71 ID:6rZ5mY140
六花の悲痛な大きな叫び声が巨大な夜空に共鳴する。
彼女の大粒の涙が俺の肩を痛く冷やす。
六花の俺の抱きしめる強さが悲しくて俺も涙をぽろぽろと落とした。
そうか……。そうだったんだな……。
六花……知ってしまったんだな……。
中二病……正体……存在……。
死に恐怖を覚えて……。
永遠の呪縛を抱えて、悩んで、笑って装って……。
俺のせいで……あのとき俺がデートしようって言わなかったら……。
なんで……なんで俺は……。
六花は今をずっとずっと待ち続けたような、
大きな怒りと悲しみと無力への抵抗を混ざり合ったような我慢の泣き声を放った。
その声が俺の心臓を潰していく……。
勇太「辛かったよな。辛かったよな……」
その言葉で六花の頭を撫でると六花の子供のような泣き叫びが激しくなった。
俺も涙が溢れて、その悲しい気持ちに嗚咽をもらした。
男らしくないけど、今は体裁なんてどうでもよかった。
ずっと長くこの悲しみに浸っていたい。ずっと共感していたい。でも目を覚ましたくない。
どうしようもないこの気持ち。
治ることなんてないこの気持ち。
でも俺ではどうにもできない……。
だから六花は話さなかったんだ……。
ああ、六花の気持ちようやくつながったよ。やっと分かり合えたよ……。
話せなかったの、辛かったよな……。認めるの、嫌だったよな……。
六花も悪くない。俺も悪くない。誰も悪くない。
その慰めも言葉で上手く言えないから、六花の体をギュッと忘れるぐらい抱き続けた。
六花「ゆうた…...。ごめんね」
「私の知っている邪王心眼は、もうとっくに削除しちゃった」
「もういないの……」
言わなくていい。分かってるさ。認めたくないよ。嫌だよ。
でもこれがほんとなんだよ……。
俺は駄々を込めるように六花の気持ちを抱いて温めた。
ずっとずっと長く。この変化を受け入れられるまでいよう。
でも受け止めてしまったら、俺と六花の楽しい毎日がすべて消えていく。
嫌だった。堪えられなかった。
でも受け入れるしかなかった。
この気持ち……冷たくて……怖い……。
俺と六花はずっと泣いた。抱いた。枯れるまで泣いた。涙なんて分からなくなるぐらい泣いた。
涙も枯れて、ただ体を互いに温め合っている。顔は恥ずかしくて見せられない。
ずっと肩の上で。
頭が働かなくなる。何も考えられなくなる。そうするとぼうっと真っ暗がぼやけてくる。
ああ、始まった。俺の中二病。俺の独善。変なものが現実に見えていく。
六花もいつか俺と離れ離れになる。結婚しても、最後はお墓。
楽しい毎日は今日で幕を閉じた。
笑いあった日々は、写真になって、死という火に燃やされていく。
知ってしまったこれ以上楽しく過ごしていけるわけがない。
あのとき、その時がやってくるまで楽しめばいいって気軽に言った自分が信じられない。
六花は体だけが残って、心はそれを装った違う人になっている。
俺はあの六花が好きだったんだ……。ああ、そうなんだ。
バカだけどないものを信じるあの六花じゃなきゃだめだったんだ。
中二病の六花は、どっかに消えてしまった。さよならも言わずに消えてしまった。
今いる六花は新しい六花。彼氏として受け止めなければならない。
でもそんな六花が受け入れられないよ!
でも受け入れたいよ!
どっちだよこの!
喧嘩をするな。二人とも。葛藤が噴火してうるさい。黙ってほしい。俺の憩いの人を返してほしい。でも正解は見つからない。
みんな、みんな、こうやって、現実を受け入れて、魚のような目をしながら生きて、乗り物に揺られて、そして死んでいく。
希望と努力と成功体験を乗せた車両に乗せた多数の蒸気機関車が、一人一台の乗務員を先頭に、俺の漆黒の目の前に展開されていく。走っていく。どれだけ努力しても、どれだけ傷ついても、どれだけ脱線から回避しても、所詮は走っているレールの先の下から突然黒い穴が開いて、車両は黒い穴へと無力に落ちていく。最後の駅にはたどり着かない。
そもそも存在しないんだ。
駅というのは、
俺の幻だ……。
六花の体を強く抱きしめる。怒りと悲しみにまみれて。
この六花はもはや別人。俺の知る六花はもういない。
ああ、言うぞ。
六花は、死んだ。
六花もこの道を通ったんだ。六花はあの先に待っている。天国に待っている。
俺も死のうか。
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