47: ◆L3c45GW7tE[saga]
2018/01/05(金) 23:15:49.75 ID:6rZ5mY140
勇太「ごめん……ごめん……」
六花「やっぱり、ないよね」
勇太「でもいつか目覚めたりするかも……しれないかもしれない」
六花「ううん。分かったから。ゆうたが無理しなくていいよ。ありがとね」
すると六花は耳の後ろにある白い輪を外し、邪王心眼を封印する眼帯を右手の掌に持ち、きゅっと握ってまた開いた。
六花「分かったでしょ」
六花「私は言いたくなかったんだけどね……言いたくなかったんだけどね」
六花「結構我慢したんだよ……。ずっとずっと思って。でもようやく理解できたんだよ。理解してくれる人がいたんだよ」
六花「私ね、今最高にね……嬉しいよ…..」
六花「はいこれ……あげる……」
笑顔で笑って、瞳から涙がぽろぽろと降らしている。差し出されたのは、あの眼帯だった。虚しく、くしゃくしゃで、何の用もなくなった、白いゴミ。
六花「ゆうた……好きだから」
いやだ……いやだ、いやだ!六花のこの顔なんて見たくなかった!何で笑うんだよ!!何で泣くんだよ!!目の前が涙でぼやけてくる。
勇太「受け取れるわけないだろ!」
ううんと首を振られて、ふるふると震える手で俺の元へそっと差し出す。
勇太「嫌だからな!絶対したくないからな……!」
それでも弱く伸ばす腕が痛々しくて、
もう見たくなくて……。
こんな思いをするならさっさと受け取ったほうがいいと思って。
こんな世の中なくなってしまえばいいと呪って。
悔しくて悲しくて、苦しい感じが首と体ごとキュッと縛られて、
六花との笑いあった思い出を駆け巡らせる中で、
正常に動かなくなった俺の震える手を、
そっと前に出して。
そしてその大事な、白いものは、
役目を終えたかのように、
ぽたっと手に渡った。
勇太「六花……六花……!」
嗚咽と叫びが止まらず、その弱くなんも力も感じない白い眼帯を手で熱く握りしめて、胸に付ける。
なんも感じないのに、胸からほのかな温かみが出てる。出てるんだよ……!
どうして……どうして……六花が……!
六花「うっ……ひぐ……ぐす……あぁぁ……あぁぁ……」
六花……六花……!
ああ、どうして……!
六花「はぁ……。はぁ…….。はぁ……」
六花は圧迫した辛い息をもらしながら涙を流して、でも今まで見せなかった優しい表情で、泣き崩れる俺の前に撫でるように挨拶をした。
最高に、笑って。
六花「ゆうた。あのね」
「ゆうた、落ち着いて聞いてほしいの」
「口を挟まないでほしい……。これは私が決断したことだから」
「今の私は、もう昔の私じゃないから……。交代したから」
「私に……ゆうたを愛する権利なんかないよ……。無力なんだよ……」
「ごめんね。ゆうたのためなんだよ。意地悪じゃないよ……」
「ゆうたに、辛い思いは、私も見たくないんだよ……」
「じゃあ。いくよ。していい……?」
「ゆうた……元気?今の私は元気だよ」
「ゆうた。いっぱい笑いあって……怒られて……でも一緒にドラゴン召喚して、ありがとう……」
「私はゆうたに感謝してる。みんなにも感謝してる」
「ゆうたが隣にいたからメンバーが増えたんだよ。私一人じゃ申請もできなかった」
「お父さんが亡くなったとき、ゆうたの信じる理想が私の希望だったよ」
「私が数学ができないとき、そっと手を差してくれてありがとう。大変だったと思う」
「携帯のメルアド交換したとき、これからずっとずっとお喋りできるんだって、すごく嬉しかったよ……」
「夜の橋の下で告白されたとき、愛されてるって気持ちを初めて知って人っていいなって感じられたんだよ……」
「初めて手を繋いだとき、守ってくれる優しさでその夜浮かれてたんだよ……」
「笑って、泣いて、これから毎日続くんだって……。人生が楽しく思えたんだよ……」
「ずっとずっといて、楽しかったよ……」
「中二病だった、あの頃の私をずっと忘れないでね……」
「短い間だったけど、ありがとう……」
「ゆうたのこと、絶対に忘れないよ」
「ずっと友達でいようね……」
「さよなら……」
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