曜「クリスマスツリーは綺麗ですか?雪は降っていますか?」
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1:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:21:31.15 ID:Bd0JRqI80
火曜日の朝、津島善子は虫の居所が悪かった。学校指定の椅子に脚を崩して座り、机に頬杖をついてひどく不機嫌な顔をしてた。曜が朝待ち合わせの時間に来なかったのだ。
どうせ大方夜遅くゲームでもして約束の時間を寝過ごしたのだろうと思い一本、また一本とバスを見過ごしても姿は見えず…結局一人でバスに乗り、善子は遅刻ギリギリに教室に到着する羽目になったのだった。

「善子ちゃん不機嫌ずら…何かあった?」

朝礼が終わるやいなや花丸が声をかけてくる。
普段おっとりして、やる事為す事がゆっくりしている花丸だが、こういった事…人の心の機微に関してはとても鼻が効く少女だった。
善子は説明するのが億劫だった、なにより一緒に登校できなかったくらいで機嫌を損ねてるなんてことを知られたくない。善子は足を組みなおし平静を装いなんでもないと返して見せた。

「まあいいずら、善子ちゃんが上手くいってないのはいつも通りずら」
「ちょっとそれどういうことよ!」
「あはは……」
からかう花丸に突っかかる善子…その様子をみて和かに微笑むルビィ。きっとそれはこれ以上は踏み込まないという花丸の合図なのだろう。
仲良し三人組の居るこの一年生の教室で、幾度となくみられた光景だった


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2:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:22:23.44 ID:Bd0JRqI80
三人が談笑する最中、けたたましくベルの音が鳴り響き教室中の注目がこちらに集まる、携帯の通知音だ。音を響かせたのは花丸の携帯だった。

「あんた……いい加減マナーモードにしなさいよ…」
「よく分かんないずら…消せるなら消したいずら…」
「ああ…もう貸しなさい!」
以下略 AAS



3:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:23:04.81 ID:Bd0JRqI80
「テスト前なのに…何かあったのかな…?」
差し当たった心当たりはない、これからテスト期間に入る浦の星で部活動は禁止されている。時偶に空いたグラウンドをこれ幸いと不正に使う部活もあるが生徒会長と理事長を擁するスクールアイドル部ではまず、行われないことだった。
大方鞠莉本人か、それに乗せられた千歌が素っ頓狂な思いつきをしたのだろう。面倒ごとの予感に善子は大きくため息をついた、それを見たルビィは不思議そうにまじまじと善子を眺めた。
「おーい授業始めるぞー」
教師の一声で皆が方々の席へと戻っていく。善子もスマートフォンを未だに真剣に見つめる幼馴染を本人の席へ行くように促し、自らの席へと居直り、姿勢を正した。


4:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:23:56.56 ID:Bd0JRqI80
授業が終わり、下校時刻となった。その時間になっても部活の無いはずのAqoursの面々は部室に集まっていた。それぞれいつも座っている所定の位置に着き、部室の中心にある机に向かって顔を突き合わせて座っている。



ただ一人、渡辺曜を除いて。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:24:31.31 ID:Bd0JRqI80
「でも安心してちょうだい、幸い数日で退院できる程度の軽症だそうよ」
ほんの少し、表情を緩めて話す鞠莉。緊張が一気に解れたような空気になった。
「良かった…どうしようかと思っちゃったよ…」
安堵と緊張で涙ぐみながら千歌が言葉を漏らす。梨子曰く今日一日連絡が無しに休んでた曜の席を延々ぼんやり眺めていたらしい。
ずっと一緒の幼馴染だ、一倍想いが強いのだろう。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:25:01.40 ID:Bd0JRqI80
「善子ちゃんって意外と先輩思いなんだね」
「ヨハネよ!別に…そう言う訳じゃ…」
「そう?結構食い気味だったじゃない、率先して手を挙げて」

見舞いすることになったのはいつも教室で一緒の二年生、それに毎朝通学を共にしている善子を加えて病院を訪れることとなった
以下略 AAS



7:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:26:14.20 ID:Bd0JRqI80
病院というのはいつも特有の雰囲気を持っていて、息苦しい。徹底的なまでの清浄であろうとする空気がそうさせているのだろう。

「曜ちゃん、お見舞いに来たよ」

暗く、陽の落ちた部屋。数台しかない小さな病院の窓際のベッドにてアッシュグレーの髪を携えた少女は外を眺めていた。声に反応し振り向く。こちらの姿を認めるとぱっと明るい顔で千歌達を招き入れた。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:26:57.57 ID:Bd0JRqI80
「じゃあね、バイバイ!」
顔を向け、言葉無しに手を振って返す。病院最寄りのバス亭からは善子は一人だった。

一人より、二人で乗ることの方が圧倒的に多いバス。どことなく調子の出ない心持ちのした善子はいつも通り一番奥の席に座り文庫本を広げたが、車酔いが回る気がしてすぐに閉じた。
窓の外を見た。川に映る夜空では星を厚い雲が覆い隠していた。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:28:17.70 ID:Bd0JRqI80
「…………」
「あれは相当イライラしてるずら、イライラデーモンずら」
「そうなの…?」
「…聞こえてるわよ」
「「ひいっ!」」
以下略 AAS



10:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:29:01.99 ID:Bd0JRqI80
テストが終わって数分後には、一年生と鞠莉を除く三年生計五人が部室の席に座っていた。前回の呼び出しの内容故に、妙な緊張が全員を襲う。神妙な雰囲気で顔を突き合わす最中、表へと繋がる扉を開け鞠莉が顔を覗かせた、その後ろに続いていたのは千歌と梨子だった。

そしてそのさらにまた後ろ、千歌と梨子の腕にべったりと、まるで依存するかのようにくっついているのは…曜だった


以下略 AAS



11:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:30:01.61 ID:Bd0JRqI80
目を見開き驚愕する面々。そんな皆を意に介さなおように、淡々と曜は言葉を続ける

三人がお見舞いに来てくれた頃は本当になんともなかった。二日ほど経って急に吐き気がするようになったという。気分が悪くなり、視界がぼやけるようになった。車のバンパーに頭を打った時、目の部分に受けた強い衝撃が原因らしい。そうこうする内に、曜の目の光はまるみる失われていったと言う。


以下略 AAS



12:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:31:17.71 ID:Bd0JRqI80
長い沈黙の中、言葉を続けたのは他でもない曜だった。


「……私はスクールアイドルを、続けたいと思う」

以下略 AAS



13:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:31:57.35 ID:Bd0JRqI80
「それと、善子ちゃん」
曜の呼びかけに善子は顔をあげる

「暫くはお母さんが車で学校へ送ってくれるけど…仕事の関係でずっとって訳にはいかないから…その…」
「登下校を手伝って欲しい…って?」
以下略 AAS



14:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:32:37.78 ID:Bd0JRqI80
曜の告白から、数週間が経過した。光の無い体で、曜はそれほど元と変わらない学校生活を送っていた。


「おはよう、曜」
「善子ちゃん、おはよ」
以下略 AAS



15:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:33:10.35 ID:Bd0JRqI80
バスを降り、学校へと続く長い坂を上る。下駄箱で靴を変えさせた後、曜を二年生の教室へと送り届ける。

「あ、善子ちゃんと曜ちゃん」
「あら、ホントね」

以下略 AAS



16:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:34:12.36 ID:Bd0JRqI80
曜は黒板が見えない。そのため教師陣も曜の意向を汲み、板書を全て読み上げながら書くなど出来る限りの協力をしてくれた。
そんな授業の終わりを告げる鐘が鳴ると、今度は部活動が始まる。当然、冬のラブライブを控えたスクールアイドル部は例え件の曜のようなアクシデントがあっても休みなし、詰め込みで練習をしなければならない。

「……曜ちゃん痩せた?」
「…そうかな?」
以下略 AAS



17:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:35:12.17 ID:Bd0JRqI80
「…そういえば千歌ちゃん、歌詞はできた?」
梨子の問いに千歌は苦虫を?み潰した様な顔で振り向く。とどのつまりそれは完成していないことを示していた。
千歌が作詞しないと作曲出来ない事、結果として自分締め切りが短くなるの事をくどくどと梨子は言ってい聞かせる。幾度となく繰り広げられた二人のやりとり、千歌はその明るい性格に反して割と思い悩む性分だった。

「そうそう、曲が出来ないと振り付けも作れないしね」
以下略 AAS



18:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:35:57.07 ID:Bd0JRqI80
「1!2!3!4!1!2!3!4!」
ステップのリズムを取るダイヤの張りのある声が屋上に響き渡る。 Aqoursの練習は変わることなく、厳しい物だった。それでも、ラブライブ突破の為には仕方のないこと、そのことはメンバー誰もが理解してここまで付いてきていた。
突如、編列の後方から悲鳴が聞こえた、曜が転んだのだ。すぐさま近くに居たメンバーが駆け寄る。

「大丈夫!?曜ちゃん!」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:36:43.40 ID:Bd0JRqI80
「…本番までには絶対転ばないようにする、だから…」
この場に居る全員への言葉。グループそれぞれのメンバーの事情とラブライブでの評価は別問題で、本番で転んでいては勝ち上がることは難しい。必死の曜に言葉を返したのは千歌だった。

「もちろん!……『やめる』なんて言わないよね…?」
いつしか親友にかけた言葉を返され、曜は声のする方へと柔らかく笑ってみせた。
以下略 AAS



20:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:37:30.58 ID:Bd0JRqI80
陽の光が西へと遠のいて、果ての空を真っ赤に染め上げる。ぽつ、ぽつと立つ民家は等しく影絵のように黒く、沈んで見えた。曜と善子は二人で帰りのバスの最後尾に座っていた。

「今日は疲れたね〜」
少し大きめの声で呼びかける曜。それに対する善子の返事はか細い物だった。

以下略 AAS



21:名無しNIPPER
2017/12/25(月) 03:39:00.36 ID:Bd0JRqI80
「……!」

突如目が覚める。急激に意識が戻り、神経が氷水を打ったように冷え切る、額に冷や汗が滲んでいく。眠りこけてしまった。普段ならドジで済むだろう。しかし曜が居る今は事情が違う。
取り急ぎバス前方の電光掲示板を急ぎ確認する、目的地である狩野川沿いのバス停には到着してないようで一先ず安心する。

以下略 AAS



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