橘ありす「二人ぼっちのアリス」
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73: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:04:03.20 ID:/aq2I7elo
 生徒たちは合唱の練習中も、ありすに話しかけては、何やら囁き合ってばかり。
 はしゃぐ気持ちを抑えられないところは、やはり子供だな、と思うけれど、無理もない。

 生徒にとって、彼女はもう、クラスメイトの橘ありすである以上に、アイドルの橘ありすだった。

以下略 AAS



74: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:06:10.59 ID:/aq2I7elo
「もしも、私の名前がありすじゃなかったら、こうはならなかったのに」

 あるとき、ありすはうんざりした様子で、ため息をついた。

「そうしたら、クラスメイトに見つからなかったし、こんな変な風にならなかった」
以下略 AAS



75: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:07:38.46 ID:/aq2I7elo
 ありすは目に涙を溜め、吐き捨てるように続けた。

「それなんです、みんなそうです。プロデューサーの方も、言うんです。
 珍しい名前の子がいて気になったって。
 ……そればっかり。誰も私をちゃんと見てくれない。
以下略 AAS



76: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:08:59.10 ID:/aq2I7elo
 ――――

 珍しく、ありすは遅刻した。
 朝礼の時刻にも間に合わず、一時間目が始まる直前にようやく教室へやってきた。

以下略 AAS



77: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:09:58.45 ID:/aq2I7elo
 放課後。

「遅刻なんて、珍しいね」

「ええ、まあ……」
以下略 AAS



78: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:10:57.42 ID:/aq2I7elo
「朝は、……その」

「うん」

「上靴が、たまたま見当たらなくて」
以下略 AAS



79: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:12:17.86 ID:/aq2I7elo
「ありす!」

 私の声は薄暗い廊下に響いて、ありすの足をやっと止めた。
 彼女の後ろ姿は蛍光灯のわざとらしい白と、窓から射す青い夕闇が混ざり合って、消えかかったように見えた。

以下略 AAS



80: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:13:05.27 ID:/aq2I7elo
「大嫌い」

 私は胸にしまいこむように、その言葉を繰り返した。

「大っ嫌い、大っ嫌い……」
以下略 AAS



81: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:14:27.32 ID:/aq2I7elo

 朝――、出勤してすぐ、ありすの母親から電話がかかってきた。
 体調を崩したので、ありすは学校を休む、ということだった。

「あ、……お忙しい中、連絡ありがとうございます。承知いたしました」
以下略 AAS



82: ◆xJHI1D1Uro[saga sage]
2017/11/10(金) 17:15:36.39 ID:/aq2I7elo
「なんでしょう?」と、私は言った。

「大変でしたよね、先生……」

 ありすの母親はどことなく、躊躇いがちな口調で言った。
以下略 AAS



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