13:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 08:52:12.43 ID:SjBa6GBgO
***
明くる日、午前のレッスンを終えて事務所でひと休みしていると、明朗な「おはよー!」という声とともに誰かが入ってきた。この声は…
14:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 08:52:51.87 ID:SjBa6GBgO
そうだ、この人に、昨日の話をしてみようか…
わたしは彼女の燃えるような赤い瞳をじっと見た。
「お、なな、なんだ?どうした、急に見つめて。」
15:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 08:53:22.07 ID:SjBa6GBgO
素敵な気持ち…そうか、この気持ちは"素敵"だったんだ。だとしたら。
「神谷さんは…」
「奈緒でいいよ」
16:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 08:54:03.10 ID:SjBa6GBgO
「けど?」
ここでわたしは、奈緒さんの顔がみるみる赤くなっていくのを見て、次に出てくる人物がすぐに分かった。あぁ、やっぱりこの人はーー
「けど、そこに最初に気付いてくれたのは、やっぱり…プロデューサーさん、なんだよな。こんなわたしを、アイドルとしてステージに押し上げた。こんな私の魅力っていうのかな…そこに気付いてくれたんだ。すごい人だよ…本当にさ」
17:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 08:54:47.42 ID:SjBa6GBgO
彼女の笑顔につられて、わたしもつい頬が緩む。
素敵な人だな、純粋にそう思った。
「奈緒〜いる〜?」
「打ち合わせ、上の部屋でやるって。」
18:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 08:55:45.32 ID:SjBa6GBgO
***
また別の日。わたしがタブレットで調べものをしていると、事務所に誰かが入ってきた。
「お疲れさまです…あら」
19:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 08:56:38.47 ID:SjBa6GBgO
この人に、あの話をしようか…一瞬頭によぎったけれど、すぐに頭から追い出した。なぜかはわからないけれど、彼女の言葉を聞くのが怖い…そう感じた。しかし、
「なにか、ききたいことがある?」
そう言って彼女はわたしの瞳を見つめた。綺麗な顔だと思った。それに、この瞳…左右の色が少し違う、いわゆるオッドアイ。これだけでも、彼女が他とは違う存在なのだと感じさせられてしまう。
20:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 08:57:10.15 ID:SjBa6GBgO
「特別扱い…しない」
「えぇ。私は、アイドルをやる前はモデルをしていたし、アイドルになってからも色々なお仕事をさせて頂いているから、沢山の人と出会うことができるのだけど、ほとんどの人はモデルやアイドルとしての高垣楓に会っている…。そう、みなさんが私を特別な存在として扱ってくれるの。それは、確かにとても嬉しいことなのだけれど…けど私は、いやだからこそ、アイドルである前にひとりの人間として、ひとりのなんでもない高垣楓として扱ってくれる人を特別に感じてしまう。これって、とても贅沢を言っているかしら。」
そう言って、楓さんは ふふっ と笑った。
21:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 08:57:47.61 ID:SjBa6GBgO
「それは…」
「だから、聞いたのかなって」
「…はい。わたしは、プロデューサーのことを…その…尊敬しています。それに、特別だと思っていて、大切に思っていて…それで…」
22:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 08:58:16.64 ID:SjBa6GBgO
***
ざわめく街で、わたしはいつもひとりだった。
本当のわたしを誰も知らない…お父さんやお母さんさえも。
愛されていることは、わかっていた。わたしのためにお仕事を頑張ってくれていることも。だから、わがままを言うべきではないと知っていた。
23:名無しNIPPER
2017/09/26(火) 09:02:13.53 ID:SjBa6GBgO
無事書き込めました!ありがとうございました
25Res/19.88 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20