320: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:22:16.45 ID:SKk6W+iM0
言いながらも、百合子ちゃんは手にしていた鞄から一冊の本を取り出しました。
隣では杏奈ちゃんが彼女と同じように、自分の荷物をしばらくごそごそした後で。
321: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:23:21.12 ID:SKk6W+iM0
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さらにそれからしばらく経って。
「おはようございまーす! プロデューサーさーん……って」
322: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:24:11.86 ID:SKk6W+iM0
「いやいやいや、そんなん言うても車が無いだけやったら大人組かもしれへんやん?」
「そうだよ志保ちゃん。万が一ってのがあるんだから!」
323: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:25:41.75 ID:SKk6W+iM0
「だとすれば、随分安く買える実力ですね」
そうして、肩を抱かれた志保ちゃんが心底鬱陶しそうに口を開けば。
324: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:26:20.32 ID:SKk6W+iM0
結局、私は奈緒ちゃんから飴玉も余分に手渡されて、
プロデューサーさんへの伝言をしっかりよろしくお願いしますと。
……当然私は事務員なんですから、連絡事項はきちんとお伝えするのが義務であります。
325: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:27:18.96 ID:SKk6W+iM0
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そうして、貰った飴玉を舐めながら衣装作りを続けていると。
「おやぶん!」
326: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:28:31.44 ID:SKk6W+iM0
だから私は、そんな三人にごめんねと前置きした後で。
「プロデューサーさんは今、社長さんに呼ばれて事務所の方に出かけてるの」
327: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:29:20.30 ID:SKk6W+iM0
「美咲さん、桃子たちからの伝言できる?」
「任せて! 伝えるのは私得意だから」
328: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:30:32.01 ID:SKk6W+iM0
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でも、本日の来客は彼女達で終わりじゃありません。
それからも劇場のアイドル達が入れ替わり立ち代わり事務室まで足を運んで来ては、
329: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:31:27.17 ID:SKk6W+iM0
「私、プロデューサーさん宛ての伝言を任されるのには慣れてるつもりだったけど、今日は特別多い気がしちゃうなぁ。
……あの山もいつ崩れたっておかしくなさそうだし、一旦衣装作りは中断して、
整頓したり伝言をメモに書いたりしておいた方がいいのかも――」
330: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:32:30.64 ID:SKk6W+iM0
「そろそろ戻って来ても良い頃かなって私も思ってるんだけどね」
夕陽に染まり始めた外の景色に視線をやって、私は肩をすくめました。
331: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:33:09.06 ID:SKk6W+iM0
「ありがとぉ〜、すっごく助かっちゃった!」と私が感謝を伝えれば、二人は小さく首を振ってから笑顔で答えました。
「そんな! お礼を言われるようなことじゃ……」
332: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:33:58.40 ID:SKk6W+iM0
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さて――こうしてデスクの上は綺麗になり、応対の合間を縫って進めていた私の仕事もひと段落。
外もすっかり日が暮れて暗くなって、お腹も空いてきた頃にようやくプロデューサーさんが劇場へ戻って来たんです。
333: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:34:53.57 ID:SKk6W+iM0
「それにしても食べ物系が結構あるな……。青羽さん、良かったらこの辺でお茶でも飲みませんか?」
「へっ!?」
334: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:36:24.67 ID:SKk6W+iM0
「おーほっほっほっほっ、御機嫌よう! プロデューサーは劇場に帰ってまして――?」
劇場で過ごす人間にとってはお馴染みとなっている高笑い。
335: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2018/12/09(日) 23:38:05.71 ID:SKk6W+iM0
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以上おしまい。美咲ちゃんにはもっと注目が当たっていいと思ってます。
336: ◆Xz5sQ/W/66[sage]
2019/02/08(金) 23:41:26.27 ID:3Bz7WrAj0
【短さよ話』
折しも時は冬休みの、冷え込んだ風が人々を嘲笑う明るい午後だった。
劇場へと続く一つの通り。
337: ◆Xz5sQ/W/66[sage]
2019/02/08(金) 23:42:11.13 ID:3Bz7WrAj0
そこに、紗代子は入店した。
長年変わらぬ音色を奏で続ける自動ドアはスムースに横へ身を避けると、
この制服姿の女学生を恭しく中に迎え入れた。
338: ◆Xz5sQ/W/66[sage]
2019/02/08(金) 23:43:10.75 ID:3Bz7WrAj0
しかしながら、紗代子が求めるのはソースと青海苔で彩られた熱々の焼き円盤ではない。
和食の王道鯖定食、男子に人気のカツカレー、パラッと炒られた炒飯でも、大盛りボリュームな丼物でも当然無い。
339: ◆Xz5sQ/W/66[sage]
2019/02/08(金) 23:44:06.57 ID:3Bz7WrAj0
なぜならば、だ。
彼女はこの時間に店を訪れれば、出来立てのたい焼きにありつけることを知っていた。
340: ◆Xz5sQ/W/66[sage]
2019/02/08(金) 23:45:03.09 ID:3Bz7WrAj0
「ああ、やっぱりもう一つ。たい焼き二つお願いします」
この言葉に今度は店員がしめしめしめ――なぜか?
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