65:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:07:05.78 ID:pXJ6Ifkk0
「ん? その日……あー、私の誕生日だー!」
後ろで聞いていた夕美さんが、大きな声を上げました。
「むふふー、ひょっとして肇ちゃん、何かプレゼント期待しちゃっていいのかなー?」
66:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:11:25.67 ID:pXJ6Ifkk0
「何か、久しぶりだね」
夕美さんの部屋で、フラワーアレンジメントです。
67:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:19:10.50 ID:pXJ6Ifkk0
最初と比べると、私もようやく少し、慣れてきたような気がします。
夕美さんのように、あまり悩まず、感性で花の生けたい位置が見えるようになってきました。
68:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:23:38.62 ID:pXJ6Ifkk0
そして、黙っている理由も、何となく分かります。
彼女はおそらく、私の言葉を、待っているのです。
69:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:26:29.10 ID:pXJ6Ifkk0
私の方から、手を動かす音すら聞こえなくなったのを感じ取ったのでしょう。
やがて夕美さんの手も、止まりました。
70:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:29:32.39 ID:pXJ6Ifkk0
――――。
しばらく、沈黙が流れ――。
71:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:32:03.62 ID:pXJ6Ifkk0
――外で、電車の走る音が聞こえます。
冬はとても日が落ちるのが早く、まだ17時にもなっていないのに、辺りはすっかり暗くなってきています。
72:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:35:57.11 ID:pXJ6Ifkk0
それからおよそ一ヶ月後――夕美さんから、お誘いを受けましたが、初めて断りました。
ちょうど、窯詰めの日だったからです。
73:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:37:51.92 ID:pXJ6Ifkk0
いつもお世話になっている窯元は、山奥にある実家の工房から、車で麓まで降りて20分ほどの所にあります。
「おう、藤原さん」
窯元のご主人は、車から降りたおじいちゃんの側へ歩み寄り、握手を交わしました。
74:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:42:31.98 ID:pXJ6Ifkk0
窯元さんの登り窯には、4つの部屋があります。
一番下の部屋にくべられた薪火の熱が、順にその上層、陶器を詰めた部屋をかけ登り、煙突を抜けていくのです。
主な燃料となるのは、油分の多い、岡山県産の赤松の割木を、およそ10トン。
75:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:45:00.90 ID:pXJ6Ifkk0
「もうちょい火元の近い所に置くか?」
ご主人は、私の作品を優先的に配慮し、詰めてくださいました。
「い、いいんですか?」
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