「藤原肇がそれを割る日」
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75:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:45:00.90 ID:pXJ6Ifkk0
「もうちょい火元の近い所に置くか?」

 ご主人は、私の作品を優先的に配慮し、詰めてくださいました。

「い、いいんですか?」
「だって大事なモンなんでしょ? こういうのは図々しくやったもん勝ちよ、気にすんな」

 ご主人は豪快に誘い笑いをしながら、しかし、とても真剣に微調整を繰り返します。

「あまり近いと、割れるかもしんねぇな。厚みも均一じゃないようだし」

「すみません……」

「いや、こういう冒険しまくってる作品、オレぁ好きだ。良いモンになるといいな、藤原さん」

 そう言って、ご主人はおじいちゃんに同意を求めましたが、

「知らん」

 と、無愛想に返します。もう、せっかくお世話になる窯元さんに、なんて態度っ。

「ワハハハ。あのジイさんが壺を割る音を目覚まし代わりに、オレらぁ育ったようなもんだ。
 今更いいってことよ。さて――」


「ここで、いいかな?」

 最後のチェックです。信頼のおける窯元さんが、入念に調整してくださった位置と向き。

 文句の付けようがありません。私は、大きく頷きました。

「はい」



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