「藤原肇がそれを割る日」
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74:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:42:31.98 ID:pXJ6Ifkk0
 窯元さんの登り窯には、4つの部屋があります。

 一番下の部屋にくべられた薪火の熱が、順にその上層、陶器を詰めた部屋をかけ登り、煙突を抜けていくのです。

 主な燃料となるのは、油分の多い、岡山県産の赤松の割木を、およそ10トン。

 10日間、昼夜を通して薪をくべ続ける、大変な作業です。


 そして、窯炊きと同じくらい重要となる工程が、今日の窯詰めです。

 作品を窯のどの位置に、どの向きに置くか。縦に置くか横に寝かせるのか。

 熱のかかり方だけでなく、灰の飛ぶ位置も考慮するのは、それによって焼き物にかかる模様も変わってくるからです。

 二つとして同じものが生まれないこの模様は、窯変(ようへん)と呼ばれ、備前焼の大きな特徴の一つです。


 やり直しのきかない、一発勝負――そして、狙った通りに窯変を起こすこともできません。

 いかに焼き上がりをイメージし、作品を詰めていくか、慎重に検討するため、窯詰めだけでも一週間近くかかります。

 でも――。



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