「藤原肇がそれを割る日」
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68:名無しNIPPER[saga]
2017/08/17(木) 23:23:38.62 ID:pXJ6Ifkk0
 そして、黙っている理由も、何となく分かります。

 彼女はおそらく、私の言葉を、待っているのです。


 夕美さんの方を、そっと見ます。

 夕美さんは、一見すると黙々と、自分の作業に集中しているように見えます。

 しかし――やはりどこか、精細を欠いているようでした。

 手の中で花をモジモジと回したり、紅茶に手を伸ばそうとして引っ込めたり、落ち着きがありません。


「夕美さん」

 私は、この沈黙が、耐えられませんでした。

「ありがとうございます。お気遣い、いただいたようで……」

 私に言いたいことがあるはずなのに、それを隠している夕美さんに、イライラしてしまいました。


 そして、それ以上に――自分の気持ちを押し殺し、夕美さんに社交辞令じみた皮肉を言う自分に。



 ――とうとう、手が止まりました。



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