175:名無しNIPPER
2017/08/09(水) 22:33:58.07 ID:hojLDG6p0
五月雨はいつも通りの口調で私に説明してくれたが、さっきの事がトラウマなのか、彼女の視線は涼風の方に向いていた。
そしてその視線は、何を考えているのか分からない複雑な視線であった。
「……ああ、あれが軽巡夕張か。なかなか手ごわい相手だな。……で、五月雨。もしさっきの事で不安なら、この試験は見なくても大丈夫だよ」
176:名無しNIPPER
2017/08/09(水) 22:36:03.60 ID:hojLDG6p0
そうか、あの涼風は土佐沖ノ島泊地所属なのか。皆、近場の泊地の子たちじゃないか。
――と、試験開始を知らせる砲撃が佐伯湾に鳴り響いた。
そして、開始と同時に谷風は夕張の方へと猛スピードで突っ込んでいった。
177:名無しNIPPER
2017/08/09(水) 22:38:08.31 ID:hojLDG6p0
一刹那、妹の主砲のリロードの時間を逃さなかった涼風は妹に急接近し十二.七センチ連装砲の火を噴いた。
妹はそれを反射的に間一髪でかわす。
見ているこっちの心臓が止まりそうだ。
178:名無しNIPPER
2017/08/09(水) 22:40:23.50 ID:hojLDG6p0
それから夕張はペアの涼風に助けを求めるがごとく、涼風の方へと逃れようとした。
が、谷風は夕張の脚を狙って砲撃し、それを食い止める。
夕張の嫌がる悲鳴がこっちにまで聞こえて何だか罪悪感に襲われた。
179:名無しNIPPER
2017/08/09(水) 22:41:25.72 ID:hojLDG6p0
「谷風ちゃん早くよけないと当たっちゃいます〜」
「え、何に?」
「あの子の魚雷です」
180:名無しNIPPER
2017/08/09(水) 22:42:36.76 ID:hojLDG6p0
「……残り三分ですね。このまま北上さんがあの子の攻撃を逃れられれば戦術的勝利、北上さんがあの子を仕留められればS勝利になりますね」
五月雨の言葉に私は黙って頷いた。
海上の谷風と夕張は急所に当たったのか、大破して沈みかけていた。
181:名無しNIPPER
2017/08/09(水) 22:44:18.44 ID:hojLDG6p0
「只今の試験の結果は、北上曹長と谷風少尉の西軍が戦術的勝利を収めましたので報告致します。また、試験結果より、北上曹長は本日付で准尉に昇任とします」
妹の勝利と昇進を知らせるアナウンスを聞き、私は思わず嬉しくなって「よっしゃ!」とガッツポーズする。
五月雨も嬉しそうに「やりましたっ!」と声を弾ませ、私に抱き着いてきた。
182:名無しNIPPER
2017/08/09(水) 22:47:04.84 ID:hojLDG6p0
それから、私は妹に集合場所をラインで伝えると、五月雨と一緒に屋台の方へと行き、自分と五月雨のぶんのソフトクリームを買った。
五月雨にはオーソドックスにバニラソフトを買って彼女に渡した。五月雨は嬉しそうに受け取る。
あ、ちなみに私は断じて変な妄想とかで彼女にバニラソフトを買ったのではない。
183:名無しNIPPER
2017/08/09(水) 22:48:30.54 ID:hojLDG6p0
「ああ、北上も先輩が五月雨で本当に良かったと思うよ。今日、こうやって北上が勝てたのも五月雨のお陰だしな」
「そう言われると照れくさいです……。私、これからも北上さんとは艦娘ではセンパイとして、人生ではコウハイとしてお互いに成長していければいいなって思います」
「ははは、北上はまだまだ幼いところがいっぱいあるから、五月雨のほうがお姉さんだぞ」
184:名無しNIPPER
2017/08/09(水) 22:49:16.31 ID:hojLDG6p0
五月雨のもとへと帰るとちょうど良い時間で、すでに北上と谷風が戻っていた。
「おー、お疲れ二人とも! よく頑張ったよ」
「司令少佐! ただいま帰ったよ!」
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