神様、どうか彼らを御助け下さい。
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7: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:00:26.59 ID:eLlVio3H0

 時折とても迂遠で婉曲な皮肉を吐く割に、時折こうやって真っ直ぐ言葉をぶつけてくるのが、俺はとても苦手だった。俺のハードボイルドが崩れてしまうからだ。

 顔のにやけが抑えられない。

以下略 AAS



8: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:01:28.62 ID:eLlVio3H0

「……ん」

「んっ」

以下略 AAS



9: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:02:19.94 ID:eLlVio3H0

 陣内崎の中央警察署は事務所からさほど離れていない。というよりも、中央警察署のそばに事務所を設けた、という表現のほうが的確だろう。
 ここは嘗ての札幌市全10区を踏襲していて、中央警察署があるのはその名の通り中心一区、事務所は境界線を挟んだ向こう側の二区にある。警察署が境界線寄りに位置しているのもあって、直線距離でおおよそ3キロ、所要時間にして三十分弱。
 警察は稀有の一番のお得意様だ。警察に頼られる探偵など物語の中にしか存在しないというのならば、もしかすると稀有は、探偵ですらないのかもしれなかった。

以下略 AAS



10: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:02:52.92 ID:eLlVio3H0

「お待ちしておりやした」

 署内に入った俺たちをすぐに出迎えたのは、捜査一課のボスである南原真南課長。刑事と聞いてすぐに思い浮かべるとおりの強面で、白髪交じりの短髪はいつも丁寧に同じ長さに揃えられている。
 責任感が強く俺たちの――というより稀有のことも丁重に扱ってくれるが、ネクタイのセンスが悪いことだけが珠に瑕だった。
以下略 AAS



11: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:03:39.46 ID:eLlVio3H0
あるが、それだって結構割り切れていたのだ。

「いや、あれでも結構変わったほうだ」

 真南はぼそりと言った。「仕事モード」の稀有との付き合いは真南のほうが長い。こいつが言うのならばそうなのだろう。
以下略 AAS



12: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:04:13.51 ID:eLlVio3H0

「俺も詳しくは知らないが、表向きのヤマは大して抱えてないみたいだ。今は裏の組織を追ってるって話だが」

「裏の組織、ねぇ」

以下略 AAS



13: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:04:45.00 ID:eLlVio3H0

 有田稀有は探偵である。

 彼女は、「死体を見れば犯人がわかる」。
 そう言う能力を持っている。
以下略 AAS



14: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:05:11.61 ID:eLlVio3H0

「遅いですよ。パーティの準備しましょうよ」

「……あぁ」

以下略 AAS



15: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:05:51.79 ID:eLlVio3H0

 陣内崎は魔都との別称もあるとおり、様々な人種と物品が縦横無尽に入り乱れた都市である。心地よい日光に照らされた広場を擁する大通りもあれば、そのすぐ脇の薄暗がりでは非合法の品も取り扱われている。
 ロシアンマフィア、華僑、在日米軍、そして「能力者」。さながら火薬庫となったこの都市は実質的に治外法権で、政府だって手を出せない。
 いや、手を出そうとした結果を誰も忘れていないだけか。忘れたころに、どうせまた、同じことは起こる。栗にやられた痛みが残っている間は、火中のそれを拾おうとはしないという程度に過ぎない。

以下略 AAS



16: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:06:17.21 ID:eLlVio3H0

 俺は陣内崎に来ておおよそ半年。対して稀有は二年以上を過ごしている。当然街については彼女のほうがずっと詳しいので、俺にできることといえば荷物持ちと、周囲の気配に慎重になるくらい。
 どちらかといえばお目当ては裏路地のようだった。七区、露天商通り。またの名を廃品通り。
 最も闇が深いと言われている八区に隣接していながら、まだこの辺りの治安は良好だ。ただし、あくまで八区に比較して、という話である。大通りでは露天商がゴザに商品を並べ、ただ黙ってじっとしている。商品も宝石類からよくわからない機械基盤まで様々だった。

以下略 AAS



17: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:06:57.50 ID:eLlVio3H0

「……物騒だな」

 幸いこちらに対して敵意はないようだ。それでも油断はならないが。

以下略 AAS



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