7: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:00:26.59 ID:eLlVio3H0
時折とても迂遠で婉曲な皮肉を吐く割に、時折こうやって真っ直ぐ言葉をぶつけてくるのが、俺はとても苦手だった。俺のハードボイルドが崩れてしまうからだ。
顔のにやけが抑えられない。
稀有は笑った。どうにも恥ずかしくなって、トレンチコートを羽織ながら足早に事務所の扉から出て行く。
「豪雨さん、ちょっと待ってくださいよ」
「やだね」
てこてこと稀有が早足で追いかけてくる。俺は真っ赤になった顔を見られたくなくて、視線を逸らしながら応答した。
「ふふっ」
「なんだ」
「耳まで真っ赤」
端的にして鋭い一言だった。観念して稀有の方を振り向けば、
「……なんだ」
「なんです」
この強情っ張りめ。
「顔が真っ赤だ」
「うっさいですねぇ。そういうのは言葉にださず、行動で示すものなんですよ」
稀有は俺と視線をかわそうとしなかった。
悔しいのか、それとも恥ずかしいのか。
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