10: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:02:52.92 ID:eLlVio3H0
「お待ちしておりやした」
署内に入った俺たちをすぐに出迎えたのは、捜査一課のボスである南原真南課長。刑事と聞いてすぐに思い浮かべるとおりの強面で、白髪交じりの短髪はいつも丁寧に同じ長さに揃えられている。
責任感が強く俺たちの――というより稀有のことも丁重に扱ってくれるが、ネクタイのセンスが悪いことだけが珠に瑕だった。
11: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:03:39.46 ID:eLlVio3H0
あるが、それだって結構割り切れていたのだ。
「いや、あれでも結構変わったほうだ」
真南はぼそりと言った。「仕事モード」の稀有との付き合いは真南のほうが長い。こいつが言うのならばそうなのだろう。
12: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:04:13.51 ID:eLlVio3H0
「俺も詳しくは知らないが、表向きのヤマは大して抱えてないみたいだ。今は裏の組織を追ってるって話だが」
「裏の組織、ねぇ」
13: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:04:45.00 ID:eLlVio3H0
有田稀有は探偵である。
彼女は、「死体を見れば犯人がわかる」。
そう言う能力を持っている。
14: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:05:11.61 ID:eLlVio3H0
「遅いですよ。パーティの準備しましょうよ」
「……あぁ」
15: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:05:51.79 ID:eLlVio3H0
陣内崎は魔都との別称もあるとおり、様々な人種と物品が縦横無尽に入り乱れた都市である。心地よい日光に照らされた広場を擁する大通りもあれば、そのすぐ脇の薄暗がりでは非合法の品も取り扱われている。
ロシアンマフィア、華僑、在日米軍、そして「能力者」。さながら火薬庫となったこの都市は実質的に治外法権で、政府だって手を出せない。
いや、手を出そうとした結果を誰も忘れていないだけか。忘れたころに、どうせまた、同じことは起こる。栗にやられた痛みが残っている間は、火中のそれを拾おうとはしないという程度に過ぎない。
16: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:06:17.21 ID:eLlVio3H0
俺は陣内崎に来ておおよそ半年。対して稀有は二年以上を過ごしている。当然街については彼女のほうがずっと詳しいので、俺にできることといえば荷物持ちと、周囲の気配に慎重になるくらい。
どちらかといえばお目当ては裏路地のようだった。七区、露天商通り。またの名を廃品通り。
最も闇が深いと言われている八区に隣接していながら、まだこの辺りの治安は良好だ。ただし、あくまで八区に比較して、という話である。大通りでは露天商がゴザに商品を並べ、ただ黙ってじっとしている。商品も宝石類からよくわからない機械基盤まで様々だった。
17: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:06:57.50 ID:eLlVio3H0
「……物騒だな」
幸いこちらに対して敵意はないようだ。それでも油断はならないが。
18: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:07:27.45 ID:eLlVio3H0
扉を開けると軽く鈴の音が鳴って、カウンターの奥の通路から、のっそりと巨大な影が姿を現した。
「――は?」
19: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:08:06.96 ID:eLlVio3H0
そんなパンダ相手に稀有がナントカ牛のドコドコの部位がこれくらい欲しいんですが、というような話をすると、パンダはこくりと一度うなずいて、その巨体を揺らしながら奥の通路へと消えていった。
「なんなんだ、あいつは……」
20: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:09:13.41 ID:eLlVio3H0
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今回は以上になります。
設定厨による作品の供養。お付き合いいただければ幸いです。
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