18: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2017/06/22(木) 14:07:27.45 ID:eLlVio3H0
扉を開けると軽く鈴の音が鳴って、カウンターの奥の通路から、のっそりと巨大な影が姿を現した。
「――は?」
素っ頓狂な声が漏れる。
店の奥から姿を現したのは、正真正銘、紛れもなく、パンダ。
白と黒の毛皮。二メートルはある背丈。愛嬌のある顔に、鋭い爪と牙。
なるほど、だからこその店名か、とは思えなかった。
「なんだこれ」
「ここは陣内崎ですし」
戸惑う俺に対して一言で稀有は回答を寄越す。
そうだった。ここは陣内崎なのだった。
普通なら、常識的に考えれば起こるはずのない出来事も、ここでは容易く起こりうる。なんせこの都市は普通でも常識の範疇にもないのだから。
それで納得できる程度には、俺もこの都市に馴染んできたのだろう。
「……」
パンダは喋らない。当然か、それともいっそ非常識も突き抜けて、ぺらぺら八か国語くらいを喋ってくれれば気持ちがいいのにと思う。
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