893: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:21:06.48 ID:kdA8uLchO
停電の暗闇のなかで白いものが混じった頭を見下ろしている光景、視線の高さや位置から主体は男の背後にぴったりくっついていて口を手で押さえている、無線機が二つデスクに置かれている、その無線機はさっきまで持っていたものだ、男に向かって無線機を使えと言う、『じゃあ、お互いがんばろう』と言いながら男の?を爪で引っ掻いく、鋭く黒い爪、指まで黒い、指が六本あることにアナスタシアが気づく……
佐藤の記憶──一体目のIBMを使用したときの。
894: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:27:26.55 ID:kdA8uLchO
アナスタシア「ムリ……アーニャには……ムリです、ケイ……」
895: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:28:23.04 ID:kdA8uLchO
アナスタシアは階段を上り始める。はじめは踏段を照らしながらだったが、歩幅と踏段の高さの感覚を把握したあとはスマートフォンのライトを下に向ける必要もなくなった。
一定の速さで階段を駆け上る。右の足と左の足を一定の高さまで上げ、一定の歩幅で前に出す、体勢を保つ、スピードを保つ、それだけを考える、佐藤のことは考えない、それをするのはケイに会ってから、アナスタシアは自分にそう言い聞かせる。
896: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:29:28.05 ID:kdA8uLchO
『正直、感謝してるんだ、君が来てくれて』
897: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:30:34.35 ID:kdA8uLchO
じっと眼を凝らすと、違和感が眼にはいった。セーフルームの入口、スライド式のドアがある場所、肩の高さくらいの位置、セーフルームの内部は別電源による照明によって薄暗く照らされているのだが、そこだけ暗闇の濃度が違った、まるで外との通り道ができてるいるみたいに……
何よりも頑丈なはずの壁に穴が開いていた。そこからリボルバーが現れ、そして腕が伸びる。
898: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:31:43.03 ID:kdA8uLchO
復活した下村がはじめに眼にしたのは、自身を見下ろしている戸崎だった。
思わず、「あ……」という声が洩れる。田中との戦闘に敗れたことを嫌でも思い知る。戸崎の表情から感情がまったく読み取れないのは、失望しているからだろうか……、
899: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:32:26.55 ID:kdA8uLchO
下村「くそっ」
下村ひとりの力では手錠を外すことは叶わなかった。
900: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:33:50.36 ID:kdA8uLchO
李奈緒美はあてもなく廊下を彷徨っていた。
田中の捕獲、佐藤の侵入、甲斐の逃亡、めまぐるしい事態の展開に惑わされ、そして銃撃戦が始まった。
901: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:35:16.79 ID:kdA8uLchO
暗闇を切り裂くように一発の銃弾が飛んできた。
田中の肩から血が飛び散り、つながれていた手が離された。
902: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:35:57.38 ID:kdA8uLchO
佐藤「いいよ!」
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