898: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:31:43.03 ID:kdA8uLchO
復活した下村がはじめに眼にしたのは、自身を見下ろしている戸崎だった。
思わず、「あ……」という声が洩れる。田中との戦闘に敗れたことを嫌でも思い知る。戸崎の表情から感情がまったく読み取れないのは、失望しているからだろうか……、
戸崎「立てるか?」
下村「はい」
敗北感を飲み込みながら、下村は顔を上げた。踊り場にフォージ安全の社員や警備員たちの死体が転がっていることに下村は気づいた。彼らのものと思われるスマートフォンは念入りに破壊されていた。
下村は一瞬、戸崎の仕業かと思ったがすぐに考え直した。戸崎がここにいるということはすでにセキュリティ・サーバー室のシステムは破壊されている。その作業を済ませるまでのあいだ、警備員はともかく社員がここにとどまる理由はなかった。それに携帯電話。それをわざわざ破壊しなければならないと知っていたのは、下村が亜人だと知られたあのとき、あの場所にいた人間だけだ……
戸崎「永井達と合流するぞ」
戸崎の呼びかけに下村は思考を中断した。右手の手錠を外すため左手でつながれた方の腕を掴み、欄干に足裏をつけ思いっきり引っ張る。
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