888: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:14:49.35 ID:kdA8uLchO
佐藤が社長室に侵入する。すばやいクリアリング。安全を確認すると、佐藤は入口から来客用のスペースへと進む。
佐藤「この部屋……」
889: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:15:37.73 ID:kdA8uLchO
平沢「起きろ、永井」
890: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:17:27.24 ID:kdA8uLchO
アナスタシアは激しく嘔吐していた。
胃がひくつき、痙攣している。もう吐き出せるものもないのに吐気は治らず、喉に酸っぱい胃液がせり上がってくる。
891: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:18:46.96 ID:kdA8uLchO
だが、アナスタシアをほんとうに戦慄させたのは痛覚の追体験ではなかった。
そのときの、“転送”のときの佐藤の感情、それもいっしょに流れ込んできた、特別な感情ではなかった、アナスタシアも抱いたことがある、たとえばライブ前のステージ袖、となりにいる美波といっしょに星のような輝きの前に歩み出し、歌を歌うときの心のはたらきとまったく同じだった。
892: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:20:05.31 ID:kdA8uLchO
アナスタシア (かいぶつ、サトウはかいぶつ、ころせないかいぶつ……)
893: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:21:06.48 ID:kdA8uLchO
停電の暗闇のなかで白いものが混じった頭を見下ろしている光景、視線の高さや位置から主体は男の背後にぴったりくっついていて口を手で押さえている、無線機が二つデスクに置かれている、その無線機はさっきまで持っていたものだ、男に向かって無線機を使えと言う、『じゃあ、お互いがんばろう』と言いながら男の?を爪で引っ掻いく、鋭く黒い爪、指まで黒い、指が六本あることにアナスタシアが気づく……
佐藤の記憶──一体目のIBMを使用したときの。
894: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:27:26.55 ID:kdA8uLchO
アナスタシア「ムリ……アーニャには……ムリです、ケイ……」
895: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:28:23.04 ID:kdA8uLchO
アナスタシアは階段を上り始める。はじめは踏段を照らしながらだったが、歩幅と踏段の高さの感覚を把握したあとはスマートフォンのライトを下に向ける必要もなくなった。
一定の速さで階段を駆け上る。右の足と左の足を一定の高さまで上げ、一定の歩幅で前に出す、体勢を保つ、スピードを保つ、それだけを考える、佐藤のことは考えない、それをするのはケイに会ってから、アナスタシアは自分にそう言い聞かせる。
896: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:29:28.05 ID:kdA8uLchO
『正直、感謝してるんだ、君が来てくれて』
897: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:30:34.35 ID:kdA8uLchO
じっと眼を凝らすと、違和感が眼にはいった。セーフルームの入口、スライド式のドアがある場所、肩の高さくらいの位置、セーフルームの内部は別電源による照明によって薄暗く照らされているのだが、そこだけ暗闇の濃度が違った、まるで外との通り道ができてるいるみたいに……
何よりも頑丈なはずの壁に穴が開いていた。そこからリボルバーが現れ、そして腕が伸びる。
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