893: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:21:06.48 ID:kdA8uLchO
停電の暗闇のなかで白いものが混じった頭を見下ろしている光景、視線の高さや位置から主体は男の背後にぴったりくっついていて口を手で押さえている、無線機が二つデスクに置かれている、その無線機はさっきまで持っていたものだ、男に向かって無線機を使えと言う、『じゃあ、お互いがんばろう』と言いながら男の?を爪で引っ掻いく、鋭く黒い爪、指まで黒い、指が六本あることにアナスタシアが気づく……
佐藤の記憶──一体目のIBMを使用したときの。
アナスタシアが顔をあげる、顔はまだ涙で濡れている、すんすんすん、と鼻をすすって涙を止めようとする、効果はなくアナスタシアはジャケットの袖でごしごし擦る、濡れた袖で顔を擦るのは不快でしかない。
アナスタシアが考えていること、──サトウはもうIBMを出せない? そしてわたしはまだ……
しかし、その考えから行動までには発展しない。
佐藤のことがおそろしくてたまらない。精神に入り込まれ、身体が拒否反応を起こしている。
亜人には生と死の境界線はないものと思っていた。だが、あると思い知らされた。そして、佐藤は境界線など気にもとめない。
自分のも他人のも。
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