892: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:20:05.31 ID:kdA8uLchO
アナスタシア (かいぶつ、サトウはかいぶつ、ころせないかいぶつ……)
不死身のコシチェイというスラヴ神話に登場する老いた悪人のことが頭を過る。コシチェイの命、魂は体と分かたれており、卵の中に隠された魂が宿る針(卵それ自体も幾重にも隠されている)を壊さないかぎりコシチェイは死なない。
佐藤もある意味ではコシチェイといえた。だが、佐藤は卵を別の場所に隠したりはしなかった。佐藤の頭は卵で、脳は針。卵と針といっしょに死んだ。なのに、魂も体もいっしょになってよみがえった。
亡霊のような存在が肉体を使って歩きまわっている。自分のことを亡霊だとも思わない亡霊が肉体を使って楽しみながら人間を殺しまわっている。
アナスタシアの心が完全に折れた。友達や黒服たちを殺されたことに対する怒りも、佐藤を止めるという使命感も心の中のどこにも見当たらなかった。
アナスタシアの泣き方が変わった。はじめは身体的な反応に従うように連続的にしゃくりあげる声を出していたが、今では唇から垂れる唾液のように長く尾を引く呻き声になっていた。敗北感に打ちのめされてしまっていた。
しばらくのあいだ、アナスタシアは泣き臥せっていた。挫折と絶望に頭を上から押さえつけられたかのようにジャケットの袖に顔をうずめていたので、涙滴や口から漏れる唾液が染み込んで袖はすっかりベタベタになってしまった。顔に冷たさを感じた。
そのとき、記憶が浮上した。
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