890: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:17:27.24 ID:kdA8uLchO
アナスタシアは激しく嘔吐していた。
胃がひくつき、痙攣している。もう吐き出せるものもないのに吐気は治らず、喉に酸っぱい胃液がせり上がってくる。
アナスタシアがふたたび嘔吐する。胃液混じりの唾が唇から垂れる。泣きながら、呻きをあげる。
アナスタシアは佐藤の記憶を見た。IBM同士の頭部の衝突によって流入してきた佐藤の記憶は、フォージ安全に現れる直前のものだった。
木材破砕機で全身が五センチ四方の肉片に刻まれたときの鮮明な記憶。
流入してきた記憶は映像的なものだけではなく、視覚が捉えたカッタードラムの回転のほかに、機械の作動音、ベルトコンベアから伝わる振動といった聴覚と触覚が知覚した感覚も記憶には含まれていた。
痛みも。
足の先からはじまった痛みがどこで終わったのかは定かではないが(心臓のある胸のあたりか? それとも脳は完全に破壊されるまで知覚を保っていたのか?)、ともかく痛覚は数秒のあいだ持続していた。
それは痛みというより一個の肉体の滅亡だった。魂を容れておくための大事なからだが無意味な肉片に変容するまでの数秒間、破滅の体験。
おそろしくて、震えた。永井が“断頭”をおそれる理由をほんとうの意味で理解した。あんな死に方をしてなお、復活した自分が前の自分と同じ自分だと信じる事はとてもできないことだった。
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