900: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/05/06(月) 22:33:50.36 ID:kdA8uLchO
李奈緒美はあてもなく廊下を彷徨っていた。
田中の捕獲、佐藤の侵入、甲斐の逃亡、めまぐるしい事態の展開に惑わされ、そして銃撃戦が始まった。
逃げなければいけないとはわかっていたが、どこへ逃げればいいのだろうか、そもそも、逃げていいような人間なのだろうか、殺されてもしかたがない人間だと自分でも思っていたのに……
李の心中は罪悪感と恐怖がないまぜになっていて、歩む方向を定められずにいる。
李はゆっくりと重い足乗りで廊下を進む。
ふと、通路の先に人影を認める、両手を身体の前に掲げるような姿勢、その姿勢には見覚えがある。
田中「ここにいたのか」
警官の制服を着た田中が言った。やはり拳銃を持っている。
李は眼を閉じた。恐くないわけではなかったが、半分くらい彷徨い歩く時間の終わりにどこか安堵しているようだった。フッーとゆっくり息を吐いた。
足音がだんだん近づいてくる。心臓が早鐘を打っている。呼吸は意識して落ち着かせている。
李は動かず、三つに重なるの音にだけ意識を集中する。
田中が李の手首を掴み、言った。
田中「付いて来い、逃がしてやる!」
李「え!?」
田中「おれの後ろにいろ! 離れるなよ!」
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