528: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:52:16.38 ID:OBzab0O/O
事態の重さに堀口は屈みこむ途中のような姿勢で動揺していた。パキッという小枝を踏む音に堀口は顔をあげた。
いきり立つように荒く呼吸を繰り返している北が猟銃の引き金に指をかけたまま、あたりを警戒していた。わずかな物音があれば、北はあまりある勢いで音がした方向を向いたので、まるで猟銃を振り回しているかのようだった。
529: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:54:21.84 ID:OBzab0O/O
中野「こんな堂々と動いて見つからねーか?」
小高い傾斜を登る永井の背中を見ながら中野が尋ねた。地面から露出した木の根を跨ぎ、幹に手をついてバランスをとりながら坂を上っていく。
530: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:55:41.89 ID:OBzab0O/O
中野「は!? ケータイ!?」
永井「おばあちゃんに買ってもらった」
531: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:57:13.82 ID:OBzab0O/O
使われなくなって何年も経つその小屋は、物置きと化していて、同じように使われなくなった廃材やポリタンクや段ボール、諸々の粗大ごみが壁際に無造作に置かれていた。
そこは居場所がなくなり、放置され、忘れ去られた物が棄てられた、忘れ去られた場所だった。
532: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:59:35.42 ID:OBzab0O/O
北「おれは年金も蓄えもあの会社の株に突っ込んでたんだぞ! おれの人生は!? 老後の計画は!? どうしてくれるんだ!?」
山中「小さい男だね! ただの逆恨みじゃないか!」
533: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:03:18.51 ID:FyC54XJBO
中野「おせえよ。何してたんだ?」
ようやく森から出てきた永井に中野が言った。
534: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:06:34.52 ID:FyC54XJBO
中野「アーニャちゃん、アイドルだって。知ってた?」
作業を続ける永井に中野が訊いた。つい最近知った凄い知識を友達に披露するときのような口振りだった、永井はナイフを止めることなく答えた。
535: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:09:01.56 ID:FyC54XJBO
永井「水難の講習とか学校でやらなかったか?」
中野「中卒だからなぁ」
536: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:10:59.37 ID:FyC54XJBO
永井「この辺りのことはいろいろ調べてある。ここから入水すれば潮の流れで押し戻されずに外へ出られるし、そう遠くへも行かない……たぶん」
中野「外国に行っちゃったりしてな」
537: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:13:10.23 ID:FyC54XJBO
男二人の落下にアナスタシアの足は浮き、転ぶようにして崖から身を踊らせることになった。海面に落下するまでに身体は前に一回転し、アナスタシア星空を見上げながら落ちていった。星の光は痙攣したかのように動きまくっていた。アナスタシアは海へと落ちた。
海面で打ち付けた後頭部と背中が痛い。冷たさと痛みでとても眼を開けていられない。パニックになり、鼻から海水を吸い込んでしまったアナスタシアを激痛が内側から襲った。発泡スチロールの浮きのおかげでアナスタシアは海面に浮上できた。鼻から海水を吐き出そうとするが、押し寄せる波が顔にぶつかり邪魔をした。波にいいようにされたアナスタシアは、浮きを手離してしまった。
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20