537: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:13:10.23 ID:FyC54XJBO
男二人の落下にアナスタシアの足は浮き、転ぶようにして崖から身を踊らせることになった。海面に落下するまでに身体は前に一回転し、アナスタシア星空を見上げながら落ちていった。星の光は痙攣したかのように動きまくっていた。アナスタシアは海へと落ちた。
海面で打ち付けた後頭部と背中が痛い。冷たさと痛みでとても眼を開けていられない。パニックになり、鼻から海水を吸い込んでしまったアナスタシアを激痛が内側から襲った。発泡スチロールの浮きのおかげでアナスタシアは海面に浮上できた。鼻から海水を吐き出そうとするが、押し寄せる波が顔にぶつかり邪魔をした。波にいいようにされたアナスタシアは、浮きを手離してしまった。
溺れそうになったアナスタシアを永井が懸命に引っ張りあげた。手足をばたばたさせるアナスタシアを海面から上にあげたままにするには、永井の体力ではあまりに心もとない。
永井「中野、まだか!」
永井は息も絶え絶えになりながら、必死に叫んだ。
中野がアナスタシアが手離した発泡スチロールを持って泳いでくる。それを見た永井はアナスタシアを押し出し、大きく呼吸しながら仰向けになって海に浮かんだ。永井は二人から離れるように流されていったが、ロープが張りつめ身体が回転したところで深呼吸し、泳ぎやすい体勢に直した。
発泡スチロールの浮きをビート板の代わりにして、アナスタシアはなんとか落ち着きを取り戻した。こちらに戻ってくる永井を見たアナスタシアは、さっきのことでお礼を言おうかとすこし悩んだ。
言うか言わないかの判断をする前に、永井はアナスタシアを通りすぎた。そしてその瞬間、海流が三人を捉え、その身体をどんどん押し進めていった。
想像以上のスピードで流されながらアナスタシアは、夜の海の宇宙のようなその黒い色そのものに、うまく言語化できない怖さを感じ始めていた。
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20