527: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:51:07.46 ID:OBzab0O/O
堀口「何だったんだ、今のは……」
堀口は杖をつき、よろめきながら立ち上がった。自分の身体を見下ろし、怪我がないことを確かめると、次は周囲を見渡した。捜索隊の面々は先ほどまでの堀口と同様に腰を抜かし、そのほとんどが自失状態から脱け出せてない。
528: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:52:16.38 ID:OBzab0O/O
事態の重さに堀口は屈みこむ途中のような姿勢で動揺していた。パキッという小枝を踏む音に堀口は顔をあげた。
いきり立つように荒く呼吸を繰り返している北が猟銃の引き金に指をかけたまま、あたりを警戒していた。わずかな物音があれば、北はあまりある勢いで音がした方向を向いたので、まるで猟銃を振り回しているかのようだった。
529: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:54:21.84 ID:OBzab0O/O
中野「こんな堂々と動いて見つからねーか?」
小高い傾斜を登る永井の背中を見ながら中野が尋ねた。地面から露出した木の根を跨ぎ、幹に手をついてバランスをとりながら坂を上っていく。
530: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:55:41.89 ID:OBzab0O/O
中野「は!? ケータイ!?」
永井「おばあちゃんに買ってもらった」
531: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:57:13.82 ID:OBzab0O/O
使われなくなって何年も経つその小屋は、物置きと化していて、同じように使われなくなった廃材やポリタンクや段ボール、諸々の粗大ごみが壁際に無造作に置かれていた。
そこは居場所がなくなり、放置され、忘れ去られた物が棄てられた、忘れ去られた場所だった。
532: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:59:35.42 ID:OBzab0O/O
北「おれは年金も蓄えもあの会社の株に突っ込んでたんだぞ! おれの人生は!? 老後の計画は!? どうしてくれるんだ!?」
山中「小さい男だね! ただの逆恨みじゃないか!」
533: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:03:18.51 ID:FyC54XJBO
中野「おせえよ。何してたんだ?」
ようやく森から出てきた永井に中野が言った。
534: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:06:34.52 ID:FyC54XJBO
中野「アーニャちゃん、アイドルだって。知ってた?」
作業を続ける永井に中野が訊いた。つい最近知った凄い知識を友達に披露するときのような口振りだった、永井はナイフを止めることなく答えた。
535: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:09:01.56 ID:FyC54XJBO
永井「水難の講習とか学校でやらなかったか?」
中野「中卒だからなぁ」
536: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:10:59.37 ID:FyC54XJBO
永井「この辺りのことはいろいろ調べてある。ここから入水すれば潮の流れで押し戻されずに外へ出られるし、そう遠くへも行かない……たぶん」
中野「外国に行っちゃったりしてな」
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