533: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/23(土) 00:03:18.51 ID:FyC54XJBO
中野「おせえよ。何してたんだ?」
ようやく森から出てきた永井に中野が言った。
永井「ん? 着替え」
言葉の通り、永井は弾痕の残るTシャツから半袖のラグランTシャツに着替えていた。
中野「あそう……おれのは?」
永井は手に持っていた筒状に丸めたTシャツを中野に投げてよこした。中野が着替えているあいだ、永井は発泡スチロールとロープを用意し、発泡スチロールに腕が通るようにナイフでくり貫きはじめた。
崖下では黒い海面が拡がっていた。波打つ海面の運動にしたがって月の照り返しがきらきらと跳ねている。空に雲はなく、すこし欠けた月と満点の星が一面に輝いていた。月明かりはともかく、小さな星の光は黒い海には届かなかったが、月の光を浴びながら崖砕ける波の欠片は星のように白かった。
見上げるには絶好の空模様だった。だが、アナスタシアは視線をさまよわせ、やがて自分の膝に視線を固定した。
永井が戻ってくるまでのあいだ、アナスタシアは中野と会話を交わした。中野はアナスタシアと同じクローネのメンバーである大槻唯のような性格で、ただでさえ喋るのが得意でないのにいつの間にか一緒に逃亡する事態に陥って途方にくれていたアナスタシアでも、話しかけられているうちに自然と口から言葉を出すようになってしまうのだった。中野はアナスタシアがアイドルであることや永井を助けようとしたことに、てらいもなく素直に感心していた(実際、「すげえなあ」と感心をあらわす言葉を何度か口にした)。
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