新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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527: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:51:07.46 ID:OBzab0O/O

堀口「何だったんだ、今のは……」


 堀口は杖をつき、よろめきながら立ち上がった。自分の身体を見下ろし、怪我がないことを確かめると、次は周囲を見渡した。捜索隊の面々は先ほどまでの堀口と同様に腰を抜かし、そのほとんどが自失状態から脱け出せてない。

 かれらは一見、茫漠としているようだったが、実際は恐怖で動けなくなっていた。根本からぼっきりと折れた枝がかれらの周囲に観覧していた。地面にはっきりと残る足跡は、人のものに見えたが、その足跡の主を目撃したものは誰一人いなかった。辺りの木は鋭い爪のようなもので切り裂かれ、幹が抉られているものもあった。

 嵐が去ったあとのような静寂と散乱が暗闇に拡がっていた。だが、それはわずかなあいだのことだった。うずくまっていた者たちが、苦痛にうめきをあげ始めたのだった。


吉田「班長、大変だ!」

堀口「どうした!?」

山田「田村さんのとこのせがれが!」


 老人たちが言っているのは、猟銃を持ち出してきたうちの一人だった。洗濯され色褪せたキャップをかぶったその男は、腕に大きな裂傷を負っていて、内部の筋肉はおろか白い骨まで見える有り様だった。持っていた猟銃は、銃身がひん曲がり、木製の銃床は砕け散っている。


石原「医者に見せなきゃやべぇよ」


 タオルを傷口に当てている老人が言った。タオルは血を吸って、赤く、重くなっていた。上腕部をベルトできつく絞めたおかげで出血の勢いは弱まっていたが、男の顔面は蒼白していて、意識も朦朧としている。



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