526: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:48:28.57 ID:OBzab0O/O
アナスタシアはその言葉にハッとして、永井の方を見た。血がこびりついたシャツに、大きな穴が開いている。血に染まったシャツには見覚えがあった。つい最近、アナスタシアはおびただしい数のそれを見たのだった。記憶はまだ生々しく、永井が亜人だとわかっていても、その赤い円形が胸元にあることに痛ましさを感じた。
血の跡はバッグのストラップに隠れて見えなくなった。ストラップを肩にかけたとき、永井の視線がアナスタシアとかち合った。永井の視線は相変わらず温度が感じられず、感情の見えない眼でアナスタシアを見下ろしていた。
永井「狩られたくなかったらついてこい」
それだけ言うと、永井は森のなかに姿を消した。
中野「立てるか?」
中野がアナスタシアに駆け寄ってきて言った。IBMで攻撃されたにも関わらず、中野は驚くほど無警戒だった。
アナスタシア「あ、あの、わたし……!」
中野「いいから。はやく行かねえと。あいつしか逃げ道知らねーんだ」
中野にうながされ、アナスタシアは足に力を入れようとしたが、うまく立ち上がることができなかった。立ち上がりかけ、途中で膝ががくんと落ち、ひっくり返りそうになったところで中野が腕をつかみ、その身体を引き上げ、森の方へと押しやった。
二人が永井の背中が暗闇のなかに浮かんでいるのをみとめたとき、背後で銃声がふたたび轟いた。
猟銃の音。アナスタシアが何度か耳にし、肌を震わせたこともあるその銃声は、いままでのそれとはまるで違っていた。
獲物として聞くはじめての銃声は、とてつもなく恐ろしい音となり、アナスタシアの心臓を震撼させた。
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