529: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:54:21.84 ID:OBzab0O/O
中野「こんな堂々と動いて見つからねーか?」
小高い傾斜を登る永井の背中を見ながら中野が尋ねた。地面から露出した木の根を跨ぎ、幹に手をついてバランスをとりながら坂を上っていく。
永井「あの人達は森の怖さをよく知ってる。たぶんここらの捜索は打ち切ってるはずだ」
永井 (それに、おそらく黒い幽霊に襲われてる。死傷者が出たなら追跡はまず無い)
中野「今晩中に山を越えればいいわけか」
永井「何日もかかるだろ。脱出は一度やった手でやる」
会話を聞きながら、アナスタシアは二人についていった。中野がそうしたように、幹で身体を支えて傾斜をのぼろうとすると、地面の落ちた葉っぱを踏んで足を滑らせてしまった。剥き出しの固い根に打ち付けた膝は皮膚が擦りむけて血が滲んでいた。転んだアナスタシアを中野がまた引っ張りあげた。服の土を払い、自分のTシャツを破くと擦りむけた膝に巻いてやった。
永井はすでに傾斜を登りきっていた。振り向きもせず先に進もうとする永井に中野が声を飛ばした。
アナスタシア「イズヴィニーチェ……すみません……」
中野「永井、ライトは?」
永井「月明かりで十分見えるだろ」
中野「いや、危ないって」
永井「注意不足。ダンスやってるんだ。そいつ、僕より身体能力あるだろ」
ひとりよがりな永井の言動に中野は憤懣とした。一方、アナスタシアは申し訳なさで心が苦しくなっていた。もともと怒りを覚えるような性格ではなかったが、まるで役立たずだと言わんばかりの永井の態度にアナスタシアはすっかり萎縮し、自分をかばってくれる中野に対しても余計な心配をかけさせている気がして、申し訳なさを覚えていた。永井はというと、着々と迷いなく夜の森のなかを歩き続けている。記憶が目印の代わりだった。
振動音が突然して、ストラップの中が光った。
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