530: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:55:41.89 ID:OBzab0O/O
中野「は!? ケータイ!?」
永井「おばあちゃんに買ってもらった」
驚く中野に永井はしれっと答える。スマートフォンの画面はおばあちゃんからの着信を知らせていた。
永井「はあ?」
奇妙に思いながら、永井はスマートフォンを耳にあてた。相手がほんとうにおばあちゃんかどうか確認がとれるまで、声は出さず息を潜めた。
電話口の向こうががなりたっていた。北の声だ。口汚い怒声がスピーカーから響いたが、それは永井に向けて放たれたものではなく、北と同じ空間にいる者に向けられていた。
永井はスマートフォンを耳から離し、しかめっ面をとある方角へむけた。側にいたアナスタシアが怯えたような不安げな表情で永井を見ていた。アナスタシアも電話越しの怒声を聞いていて、不穏な雰囲気を察知したのだが、永井はそのことにまったく気づいてなかった。
中野「永井、急がねーと」
中野が振り向いて永井に言った。中野は遠くから聞こえるかすかな波の音に導かれ、先頭を永井と入れ替わっていた。永井は身体の向きを視線の方角に合わせると、ワンショルダーバッグを外し、おもむろに肩を落としながら引き返しはじめた。
永井「はあ……先行ってて……」
面倒ごとにおもむく前によくやるため息を交えながら永井は言った。
中野「どうした!?」
永井「忘れ物!」
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