新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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517: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:31:27.84 ID:OBzab0O/O

永井「佐藤さん……アンタ……本当に住み良い国を作る気あんのか?」


 そう呟いたあと、永井は額を押さえたまま頭をあげた。また傷口から血がゆっくり流れてきた。永井はもう一度手のひらで血を拭った。何度か瞬きして焦点が合ってくると、影と夕陽が切り分けた視界のなかに、白煙がゆらゆらとひしゃげたボンネットの隙間から立ち上っていた。
以下略 AAS



518: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:32:57.24 ID:OBzab0O/O

中野「ざまあ! 登ってやったぞ!」 


 コンテナの扉まで到達した中野がそらまでの鬱憤を晴らすかのように叫んだ。コンテナの内壁にはなんとか指を半分まで入れ込むことが可能な溝が入口から奥まで直線上に並んで延びていて、中野はその溝に指をかけ梯子を登るようにコンテナの頂上むけて登っていった。
以下略 AAS



519: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:34:12.44 ID:OBzab0O/O

中野「よし……ん?」


 中野は力を込めて扉をあげようとしたが、入口はビクともしなかった。
以下略 AAS



520: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:37:02.93 ID:OBzab0O/O

 はっきりしないながらもアナスタシアが意識を取り戻したとき、アナスタシアはロープで吊り上げられた状態で、ダクトテープで固定された両手足がぶらぶらと止まりかけた振り子のように揺れていた。

 ぼおっとしていると、アナスタシアの身体がぐいっと上に引っ張りあげられる。身体を縛るロープが肋骨に食い込んで痛い。引っ張られるたびにロープはぎしぎしと肋骨に食い込み、うめき声をあげそうになったが、口に巻かれたダクトテープのせいで喉の外に声が洩れることはなかった。そのかわり、ポロポロと涙が出てきてしかたがなかった。

以下略 AAS



521: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:38:12.29 ID:OBzab0O/O

 アナスタシアは身体中の痛みに気をとられて、まわりの状況を判断できる状態ではなかったが、すぐ側にいる人影に気づくととっさに身の危険を感じ、本能的にIBMを発現した。

 救いを求めるような必死さを込めて、その人影を遠ざけるようIBMに願うと、星十字のIBMは人影の胸の真ん中に爪を突き立て腕まで貫通させ、腕を真っ直ぐに伸ばしたままいちばん近い杉の木まで突進していった。攻撃を受けた人物と木が衝突し、幹は大きく穿たれ、ガサカザッと葉を鳴らしながら、木が大きく揺れた。

以下略 AAS



522: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/12/22(金) 23:40:23.48 ID:OBzab0O/O

 夜の帳がおりた森の只中は穏やかで、とても人が死んでいる風景には見えなかった。おぼろげな月明かりと夜風に包まれると気持ちが良くて、蒸し暑さを忘れるほどだったが、中野の胸の穴からは血が帯のようになって流れていた。

 脅威を退けるよう懇願されたIBMは、次の命令がないため中野に腕を打ち込んだまま沈黙していた。永井がIBMを発現し、この凶暴な黒い幽霊が星十字型の頭部を砕いた。IBMの身体がくずおれ、木に張りつけられていた中野が地面に落ちる。

以下略 AAS



523: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:41:57.52 ID:OBzab0O/O

 永井のIBMはもう消失したのか姿は見えず、中野は幹の半分が抉られた倒木からすこし離れたところに倒れていた。中野はもうそこにはない胸の穴を押さえながら起き上がった。

 触ってみてはじめて気づいたが、中野の服の破れ目はまるい穴ではなく、肋のうえに横線が引かれているようにぱっくり開いていた。中野は破れ目が背中のほうまでつながっているのか確かめようと首を回した。そのとき、井戸の周辺の、かつて均され、いまはところとごろに草が生えた自然状態の開けた地面と森との境界に、一本の腕が転がっているのを見つけた。

以下略 AAS



524: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:44:36.86 ID:OBzab0O/O

アナスタシアは足首にきつく巻き付いたテープを切るのに苦戦していた。ナイフの刃が粘着部に貼りつき、何層にも重ね巻きされたテープに食い込んでいかない。

 おもむろに永井はアナスタシアに近づいた。アナスタシアはあせった。永井がすぐ横まで近づくと、固く眼を閉じ、頭を永井の反対側に傾け、ナイフを持つ手をかばうかのように突きだした。

以下略 AAS



525: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/12/22(金) 23:46:30.86 ID:OBzab0O/O

永井「グラント製薬の本社ビルに旅客機で突っ込んだんだ。その後の対応にあたったSAT五十名も、佐藤に殺された。亜人はいまやテロリストと同義語だ。助かりたかったら……」

中野「あっ!」

以下略 AAS



526: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:48:28.57 ID:OBzab0O/O

 アナスタシアはその言葉にハッとして、永井の方を見た。血がこびりついたシャツに、大きな穴が開いている。血に染まったシャツには見覚えがあった。つい最近、アナスタシアはおびただしい数のそれを見たのだった。記憶はまだ生々しく、永井が亜人だとわかっていても、その赤い円形が胸元にあることに痛ましさを感じた。

 血の跡はバッグのストラップに隠れて見えなくなった。ストラップを肩にかけたとき、永井の視線がアナスタシアとかち合った。永井の視線は相変わらず温度が感じられず、感情の見えない眼でアナスタシアを見下ろしていた。

以下略 AAS



527: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:51:07.46 ID:OBzab0O/O

堀口「何だったんだ、今のは……」


 堀口は杖をつき、よろめきながら立ち上がった。自分の身体を見下ろし、怪我がないことを確かめると、次は周囲を見渡した。捜索隊の面々は先ほどまでの堀口と同様に腰を抜かし、そのほとんどが自失状態から脱け出せてない。
以下略 AAS



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