520: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:37:02.93 ID:OBzab0O/O
はっきりしないながらもアナスタシアが意識を取り戻したとき、アナスタシアはロープで吊り上げられた状態で、ダクトテープで固定された両手足がぶらぶらと止まりかけた振り子のように揺れていた。
ぼおっとしていると、アナスタシアの身体がぐいっと上に引っ張りあげられる。身体を縛るロープが肋骨に食い込んで痛い。引っ張られるたびにロープはぎしぎしと肋骨に食い込み、うめき声をあげそうになったが、口に巻かれたダクトテープのせいで喉の外に声が洩れることはなかった。そのかわり、ポロポロと涙が出てきてしかたがなかった。
さらに災難なことに、アナスタシアは垂直方向に真っ直ぐ、つまり真上に引っ張りあげられているわけではなく、井戸の外にいる何者かがアナスタシアに巻かれたロープを綱引きの要領で無理矢理引っ引っ張っていたため、アナスタシアは井戸の内壁に身体のあちこちをぶつけられ、ゴツゴツした石に肌を擦り付けられるはめになった。
口を塞がれているため、やめてと訴えることもできず、アナスタシアは、肋骨にロープを食い込ませるがまま、石にぶつけられるがままの状態で吊り上げられていった。
ようやくアナスタシアの身体が井戸の外に引っ張り出された。最後はロープでなく誰かの腕によって引き上げられたが、襟の後ろを乱暴に掴まれての動作だったので、首がすこし絞まって苦しい思いをした。
目の前には意識を失う直前に目にした暗闇が引き続き広がっていたが、井戸の底の奥深い息もできないくらい濃密な闇と違って、土の湿り気を感じながら見るこの闇にはじんわりと濃淡があり、斜め上に伸びる線があった。それらの線は森をかたちづくる樹木の輪郭だった。月明かりは葉の繁りに遮られていたが、光は空気の中に混じり、動くものがいるかどうかくらいは見分けられる程度の明るさはあった。
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