新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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517: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:31:27.84 ID:OBzab0O/O

永井「佐藤さん……アンタ……本当に住み良い国を作る気あんのか?」


 そう呟いたあと、永井は額を押さえたまま頭をあげた。また傷口から血がゆっくり流れてきた。永井はもう一度手のひらで血を拭った。何度か瞬きして焦点が合ってくると、影と夕陽が切り分けた視界のなかに、白煙がゆらゆらとひしゃげたボンネットの隙間から立ち上っていた。

 永井はドアを開けて外に出た。車に凭れかけて疼痛を堪えると、おもむろに息をおおきく吐き、ワンショルダーバッグを掴み、肩にかける。銃撃によって破れたTシャツの穴にショルダーストラップが重なり、乾いた血が縁取った円形だけが見えるようになった。

 永井は迷うことなく森の暗闇のなかに足を進めていった。まるで暗闇が自分に味方してくれるとでもいいたげな強い足取り立った。

 何羽ものカラスがカアカア鳴きながら丸い夕日に向けて飛び立った。その鳴き声は蜩の声と混ざり、時刻が刻一刻と進んでいることを告げているようだった。


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