516: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:29:58.79 ID:OBzab0O/O
『彼らは人を殺したとしても、何も感じたりはしません』
『例外なく、すべての亜人が危険だということを、国民一人一人が認識すべきだったのです』
藤川はためらいなく言い切った。
永井は額を押さえながらカーナビから流れてくる音声を聞いていた。
夕暮れが進み、赤く照らされた場所がどんどん小さくなっていく。木に衝突したバンも薄暗い影に覆われ、蜩のカナカナと鳴く声が森に物寂しく響いていた。
『今後も続くであろう佐藤の凶行がその事実を我々に教えてくれるでしょう』
大学教授のその言葉を最後にニュース番組はコマーシャルに入った。居酒屋での飲み会の光景。栄養ドリンクのコマーシャルで、高垣楓が出演していた。姉とおなじ346プロダクションに所属し、女優業でも確かな成果を出している名実ともにトップアイドルの彼女だったが、永井はそのことを知らなかった。
多くの人間にとって、さきほどの大学教授の言説もコマーシャルで語られるドリンクの効用も、等価に聞き入れられ、意識の片隅に置いておかれる言葉なのだろう。どちらの言葉も語られる対象へのイメージを形作り、そのイメージを人びとは判断を下す材料のひとつとする。
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