523: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:41:57.52 ID:OBzab0O/O
永井のIBMはもう消失したのか姿は見えず、中野は幹の半分が抉られた倒木からすこし離れたところに倒れていた。中野はもうそこにはない胸の穴を押さえながら起き上がった。
触ってみてはじめて気づいたが、中野の服の破れ目はまるい穴ではなく、肋のうえに横線が引かれているようにぱっくり開いていた。中野は破れ目が背中のほうまでつながっているのか確かめようと首を回した。そのとき、井戸の周辺の、かつて均され、いまはところとごろに草が生えた自然状態の開けた地面と森との境界に、一本の腕が転がっているのを見つけた。
中野「永井、腕とれてる」
永井「生えてるだろ、新しいのが」
中野「どうすんの、あれ?」
永井「井戸に捨てとけ」
自分の腕とはいえ、切断された身体の一部を手にとることに中野は忌避感をおぼえた。おそるおそる触れてみると、指で押さえたところの皮膚が沈みこみ、ぶよっとしていた。中野の躊躇にしびれを切らした永井は、中野の腕をぶんどり、井戸にむかって放り投げた。腕はくるくる回転しながら、アナスタシアのすぐ上を通りすぎ、井戸の底に落ちていった。
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