524: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:44:36.86 ID:OBzab0O/O
アナスタシアは足首にきつく巻き付いたテープを切るのに苦戦していた。ナイフの刃が粘着部に貼りつき、何層にも重ね巻きされたテープに食い込んでいかない。
おもむろに永井はアナスタシアに近づいた。アナスタシアはあせった。永井がすぐ横まで近づくと、固く眼を閉じ、頭を永井の反対側に傾け、ナイフを持つ手をかばうかのように突きだした。
永井は受け渡されでもしたかのようにナイフをひったくると、縛られた足首をぐいっと持ち上げテープを両断し、次いで身体のロープ、そして口元のテープを手際よく切断していった。すべらかなナイフの動きは清流を泳ぐ魚のようで、月の光を反射したナイフの刃が鱗のようにきらめいた。
アナスタシアは永井の思いもよらない行動に呆気にとられていた。永井はたしか、アナスタシアが亜人であることを露見させたあと、しかるべきときに解放してやると言っていた。だが、永井の様子はどう見ても思惑が滞りなく進んでいるようには見えなかった。しかも、敵対していたはずの中野まで一緒にいる。
永井はそんなアナスタシアにむかって口を開いた。
永井「佐藤がテロを決行し、七百人余りが死んだ」
永井の説明はあっけなく、たんなる事実の報告としてアナスタシアの耳に届いた。そのあっけなさのせいでアナスタシアの頭はしゃっきりせず、言ってることをちゃんと理解できないまま永井の言葉を聞いていた。
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