新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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522: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/12/22(金) 23:40:23.48 ID:OBzab0O/O

 夜の帳がおりた森の只中は穏やかで、とても人が死んでいる風景には見えなかった。おぼろげな月明かりと夜風に包まれると気持ちが良くて、蒸し暑さを忘れるほどだったが、中野の胸の穴からは血が帯のようになって流れていた。

 脅威を退けるよう懇願されたIBMは、次の命令がないため中野に腕を打ち込んだまま沈黙していた。永井がIBMを発現し、この凶暴な黒い幽霊が星十字型の頭部を砕いた。IBMの身体がくずおれ、木に張りつけられていた中野が地面に落ちる。


中野「なんで……」


 中野は復活すると、頭を振って意識の回復をはかった。永井のIBMが再度中野を貫き、さっきとおなじ木に磔にした。


中野「おれ……」


 二度に渡ってIBMから攻撃を受けた杉の木の幹に亀裂が走り出し、木っ端が散って、ついには幹がずり落ち、アナスタシアめがめて倒れてきた。

 アナスタシアは咄嗟の反応で縛られた両腕で頭をかばい、恐怖で瞼を固く閉じたが、倒れかかる木は枝が別の木の枝と絡みつき、玄のように弾かれる音を響かせながら、骨や内蔵を押し潰そうとアナスタシアに容赦なく降りかかってくる。

 突然、アナスタシアの身体が引っ張られる。草の葉がふくらはぎをくすぐる感触をおぼえた直後、ドスンという大きな物音が振動として伝わった。アナスタシアが眼を開けると、さっきまでいたところに木が横たわっていた。

 アナスタシアを倒木から救ったのは永井だった。永井は折り畳みナイフでとりだし、アナスタシアの手首を縛っている灰色のダクトテープを切断すると、ナイフをアナスタシアに握らせた。


永井「あとは自分でやれ」


 永井はそう言い残し、中野が木の下敷きになってないか確かめにいった



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