324: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:49:05.46 ID:8mPTevMeO
永井「亜人管理委員会は現在逃亡中の僕の行方を最優先に捜索しているだろう。僕の家族や知人は確実に監視されているし、電話の傍受や盗聴だって行なわれているかもしれない」
アナスタシア「でも、ミナミはほんとうに、とても心配して……」
325: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:50:33.48 ID:8mPTevMeO
永井は顔を上げて、ふたたびアナスタシアを見据えながら言った。
永井「どうしてわざわざ研究所に?」
326: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:51:34.30 ID:8mPTevMeO
永井「けっこう旨かっただろ?」
草の上に倒れるアナスタシアに向かって、永井は座ったまま、すこしも身動ぎせず説明してやった。
327: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:54:35.18 ID:8mPTevMeO
アナスタシアは反射的に黒い幽霊を発現していた。それはどことも知れないところから、だれともわからない人物が自分の顔面めがけて硬いボールを投げつけてきたとき、咄嗟に眼や鼻を腕を交差させて守るという動作に似て、反射的であっただけに正確さに欠けていた。発現したきり沈黙し立ちぼうけているアナスタシアの幽霊に、永井が発現した黒い幽霊が襲いかかり、その頭部を砕いた。
永井「その状態じゃあ、幽霊はまともに操作できないみたいだな」
328: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:56:38.05 ID:8mPTevMeO
永井が水がせせらぐ切り立った崖の反対側、光を遮る緑の森に背を向けたとき、木々の間に生い繁る瑞々しい青草を踏む音が聞こえてきた。その草を踏む者は森のなかから飛び出してきたかと思うと、アナスタシアの身体に鋭い爪を突き刺そうとする黒い幽霊めがけて跳躍し、その背中に両足で蹴りを食らわせた。
中野「逃げろっ!」
329: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:57:43.47 ID:8mPTevMeO
言葉を切った瞬間、永井は死んでいる中野に向かって駆け出した。突然現れたこの男は、黒い幽霊が視認できていた。腹部に開いた傷口から黒い粒子の放出が始まっている。永井は足を上げ、中野の顎めがけてサッカーボールよろしく蹴りを放つ。
つま先が顎を打つ直前、中野の復活が完了した。中野は反射的に両手で顎を庇い、永井の右足を掴んで引き倒そうとする。だが、蹴りの威力を受け止めきれず、両手を弾かれながら中野は肩を回しながら後ろへ倒れた。永井のほうも足を掴まれたせいで、まるで氷で滑ったみたいに背中から地面に落ちた。中野は体勢を立て直そうと、後ろについた手に力を込めた。
330: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:59:25.17 ID:8mPTevMeO
警告に振り向くと、ブレをはらんだ軌道が右斜め下から顎を狙って打ち上げられてくるのを中野の眼が捉えた。中野は後ろに身体を傾け、線を回避する。 永井は一メートル程の長さの木の棒を右手で握っていた。振り切った棒を両手で掴み、今度は中野の左側頭部めがけてふたたび攻撃しようと前に出る。
永井 (第二案「脳しんとう」。頭を揺さぶり、軽度なら数秒、重度なら数時間意識喪失させられる)
331: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 14:01:10.99 ID:8mPTevMeO
永井は両手を棒の両端に移動させると、膝を打ち上げ横に倒した棒を半分に叩き折った。痛々しくさされだった折れ目を、首に巻きついている中野の腕に深々と突き刺す。中野に痛みが走った瞬間、首への圧迫が弛む。永井は拘束から完全に解放されるため、腕に突き刺さったままの木の棒を捻って傷口を苛み、さらなる痛みを与える。
中野は痛みに耐え切った。激痛にもかかわらず、解きかけた腕をさっき以上の力を込めて永井の首を拘束し、身体を後ろに倒しながら、首にかかる圧力をさらなるものにしようとする。
332: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 14:03:44.94 ID:8mPTevMeO
この静止状態を打ち破ったのは、やはり永井だった。復活が完了した永井は、今度は中野の両腿に折れ目の尖端を突き刺し、大腿筋の深部まで捩込んだ。
中野「痛ってえ!!」
333: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 14:05:09.79 ID:8mPTevMeO
ついに中野の意識が消えさった。手足の痙攣が去り、呼吸音すらない完全な沈黙に入った。無呼吸期の段階では、心室細動さえ起こっている。中野の顔面はチアノーゼで青紫色になっていたが、結束バンドが絞めついている部分では毛細血管が破れてピンク色になっていた。
永井は中野の胸から膝をどけ、立ち上がって振り向いた。アナスタシアの姿が消えていた。
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